2011年08月24日

青春18きっぷの旅

会社全体で節電するということで、長い夏休みを取ることになった。ビルの中に人がいなければ、ほとんど電気を使わずにすむ。こういう時は思い切った対応が必要になるということだろう。せっかくの長い休みなので、各地を旅しながら福岡の実家に帰ることにした。まず最初に、「青春18きっぷ」を購入した。「青春18きっぷ」というのは、JRの普通列車などが1日乗り放題になる券で、1枚2,300円の1日券が5枚綴りで11,500円で販売されている。学生時代に18きっぷで旅行した人も多いと思うが、僕は今回がはじめて。時間がたっぷりとある旅行では、この切符は重宝する。学生時代にもっと使っておけば、と後悔もするが、いまだにこんな切符で旅行ができるというのも楽しいものだ。

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新宿発のムーンライト信州に乗ることにした。指定席だが特急ではないので、18きっぷでも乗ることができる。この列車は面白い。なんと新宿を23時50分頃出発して、翌朝の4時半頃に松本駅に着くという。夜行列車とはいえ普通の列車。夜中はどうするというのだろうか?横になるわけにもいかないし、新幹線のようにゆったりと眠れるシートでもないだろう。いろいろと想像しながら列車に乗り込んだ。でもなんのことはなかった。座席にすわって寝るだけ。普通の座席なのでけっこう首が疲れたが、みんな座ったままの姿勢でよく寝ていた。車内はほとんどが山登りの人たち。早朝から山に登るので、この列車が必須になっているようだ。これから九州に帰ろうというのは我々くらいだろう。ところでこの列車に乗るにはちょっとした技がある。18きっぷは1日乗車券なので、乗車する時(23時50分頃)に使ってしまうと10分弱で1日分が終わってしまう。どうするかというと、ちょうど0時になる中野駅まで切符を買っておく。0時以降は車内で青春18きっぷに切り替える。こんなテクニカルな乗り方、「乗り鉄」と呼ばれる鉄男・鉄子でなければ知らないだろう。(僕は鉄男ではないが‥)

松本駅に着いたのは4時40分頃。さて、これからの時間、どう過ごすか。とりあえず寝たいが、横になるような場所はない。駅前に、ある意味有名なマックがある。24時間空いているのだが、朝5時まではテイクアウトのみで店内で食べることはできない。ということは、中で寝ることができない!早朝に松本駅に着く登山客は皆ここで休んでいくのだろう。何か事情があったのかもしれない。しかたなく、15分ほど待ってコーヒーを購入した。無事座席に座れたものの、なんとなく気が張っていて寝る気にはなれない。結局寝ることはなく、旅の予定など計画を確認して外に出た。

マックを出て最初に向かったのは、松本城だった。鋭角に尖った石垣が朝日に映えてなんともいい。まだ城の中には入れないが、周囲は公園のように使うことができる。朝の城下は清清しく、犬の散歩やベンチでぼーっとする人など、けっこう人がいる。松本市内は湧水が多い。いたるところに水のみ場があるが、「飲み水ではありません」みたいなことが書かれている。どの水もひんやりと澄んでいて、おいしそうだ。この湧水群は「まつもと城下町湧水群」として「平成の名水百選」に認定されている。

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朝食は偶然見つけたパン屋「パントリー マルナカ」。80年を超える老舗だそうだ。モーニングは、大変な賑わいだった。モーニングセットとクロワッサンを注文した。クロワッサンはバターが多めな昔ながらの味。最近食べた中では一番おいしいクロワッサンだった。モーニングセットは、トースト・ベーグル・サンドイッチなどが選べ、ドリンクやサラダなどが付くリーズナブルなセット。たまたま見つけた店とはいえ、侮れない実力店だと感じた。地元に根差した店には感銘を受けることが多い。こういう店があるということは、松本には他にもまだまだいい店がありそうだ。

列車の中で寝ると疲れがとれない。へんな姿勢で寝ることになったので、腰や首が痛くて眠りが浅くなった。それを見越して初日はたっぷりと時間をとってある。でも少し歩くと元気が出てきた。疲れは多少あるが、休みは必要なさそうだ。松本城のついでに近くにある神社や古い学校の校舎などを見て回った。あまりに暇なので温泉に行くことにした。

こんな調子で旅行記は続く。松本でのメインはお昼の信州そばだった。これを書き上げるにはちょっと時間が掛かる予定。今回の旅行は食べるのが目的ではなかったのに、この日はそばを2軒はしごしたし、かなりのペースでいろいろと食べ歩いてしまった。そもそも九州に帰るのに、最初に松本に行ってるあたりからあやしかったわけだが‥。というわけでしばらくの間、食い倒れ旅行記にお付き合いください。


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2011年08月12日

『東京「駅近」居酒屋名店探訪』(東京書籍) について

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『東京「駅近」居酒屋名店探訪』(東京書籍)(税込1,365円)が発売されて、1ヶ月。書店を見て回ったり、人から評判を聞いたりするなかで、なんとなく反応が掴めてきた。藤原さんのコラムは非常に充実していて、そのことに関する賛辞も多い。独自目線で綴られたマニアックなコラムの数々は、教えられるところもあれば「えっ?そうなの?」という部分もあり、藤原ワールドが全開。ぜひじっくりと読んで楽しんで欲しい。

今回の本については、『東京「駅近」居酒屋名店探訪』(東京書籍) 発売!などにも書いた通り、僕としては新たなチャレンジの意味合いが大きい。本にも雑誌にもテレビにも出たことがない、文字通り「知る人ぞ知る」居酒屋をいくつか紹介した。そんな中でも最もサプライズと言えるのが、渋谷の「GNSP」だろう。クチコミサイトなどでも完全なノーマーク。でも連日満員の人気店だ。なぜ知名度が低いのか?たぶん雑誌やテレビのリサーチ不足なんだろうと思う。僕も時々ネタ出しの依頼があるけど、評価する側が食について認識が低いと面白さが伝わらないというのはよくある話。その店のよさが分からなくても、実績があれば話は別。「~テレビの~という番組で取上げられた」と言うだけでOKが出ることは多い。雑誌にもテレビにも出たことがない店は、ほんとうに採用されにくい。GNSPも何度か紹介したが、食いつきがよくないのはそういう理由からだろう。

何度も通っているのに、ブログに書いてない店も多い。ある程度知られるようになるまでは、ブログでは紹介しないことにしている。居酒屋は特に、そっとしておいた方がいい場合が多い。「東京「駅近」居酒屋名店探訪」には、そんな店もいくつか載せることにした。一般に知られていない店を自分の著書で紹介するのは面白い。二番煎じばかりの居酒屋本にあって、これほど新店を紹介した本は最近ではあまりないと思う。萬屋おかげさんもご主人に事情を説明して、書かせてもらった。他にもミシュラン掲載店をのせているので、興味のある方は探してみてほしい。ミシュランと見比べると、感じ方、勧めるポイントがかなり違っていて面白い。萬屋おかげさんについては、ミシュランの方が間違えている(安居酒屋ではない!)と、個人的には思うんだけど・・。

2011年08月09日

アンセーニュダングル 原宿

原宿駅から竹下通りを右手に坂を上ると、坂の上は三差路になっている。道なりに進むと明治通りにぶつかり、左に行くとデザイン事務所などが点在する住宅地になる。この辺りは原宿とは思えないほど人通りのない静かな路地が続いている。20年前のある日、少女が雨に打たれていた。その日はずっと曇りがちで、パラパラと小雨が降りはじめたところだった。坂を越えて線路脇の茂みの方になんとなく歩き始めた時、急にバケツをひっくり返したような激しい雨に変わった。彼女は逃げ込むようにこの路地に迷い込んだ。小さい頃から原宿が好きで毎週のように通っていたが、この道に入るのははじめてだった。次の角にカフェを見つけ、たまらず駆け込んだ。営業時間はすでに過ぎていたが、店員は彼女を快く店に入れ、一杯のコーヒーを差し出した。これがカフェ・アンセーニュダングルとの出会いだった。

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彼女はこの店の常連となり、今も通い続けている。店員は何度も替わったが、カウンターの居心地のよさはずっと変わらない。彼女を招き入れた親切な店員は、実家のある関西に戻り、俵屋のカフェ遊形 サロン・ド・テのプロデュースなどを手掛けている。僕は、彼女からこの店を紹介された。今は店長の新名氏が店を守っている。どういう縁か、新名氏とはよく一緒に食事に出掛ける。今では僕にとっても特別な店になった。

創業は1975年。当時流行っていたアメリカンコーヒーではなく、深煎りのフレンチコーヒーを選んだ。カウンター主体のスタイルは、後に多くの模倣店を生んだが、アンセーニュダングルほど明確なコンセプトが伝わってくる店はない。この店の魅力について、あまりに書くべきことが多い。木のカウンターに赤を基調とした色使い。薔薇は広尾のローズギャラリーから届く。いろんなタイプの席があり、様々なシチュエーションに対応できる。内装は松樹新平氏が手掛けた。半地下というのもいい。フランスの片田舎のカフェは、たぶんこんな雰囲気なのだろう。カウンターは特に居心地がいい。木の肌触り、高さ、幅、椅子の座り心地、バーテンダーさんとの距離感。落ち着く要素が全て揃っている。細かいこだわりは多々あるが、それらを貫く空気感こそがこの店の最大の魅力なのかもしれない。毎週、土曜か日曜の夕方には必ず顔を出す。常連はカウンター、そうでなければテーブル席に案内される。もちろん、カウンターを希望すれば誰でも座ることができる。喫煙は可。でも不思議と気にならない。誰でも受け入れてもらえる空気が流れている。

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ブレンドコーヒー 

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琥珀の女王 

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アンセーニュダングルの何がうまいか。真っ先に「水がうまい」というと叱られるだろうか。僕はとにかくここの水が好きで、いつもたくさん飲んでしまう。コーヒーで好きなのはブレンドコーヒー。ブレンドは1杯目に飲んでも2杯目に飲んでも、「おかわり」扱いになる。おかわりは半額。安いだけでなく味もしっかりとしている。オールドビーンズを使用した深煎で、多くの人が注文する「ブレンド」にしては、マニアックな風味。1杯目に何を飲もうか。マンダリン、ガテマラ、コロンビアなどは僕の定番。カフェ・オ・レにホイップを浮かべた「カフェ・クレーム」もいい。ジャバ・ロブスタは変わった味だが最もコスパが高い。「琥珀の女王」や「アイリッシュコーヒー」などもオススメ。その場で皮をむいて搾ってくれる「グレープフルーツジュース」も隠れた人気。メニューは多くないが、よく練られている。何もかもが最初に考え抜かれ、その後はずっと変わらない。これが重要なのだと思う。

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クロックムッシュ 

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ガトー・フロマージュ 

「クロックムッシュ」と「ガトー・フロマージュ(チーズケーキ)」は看板商品だ。自由が丘と広尾にも店舗があるが、ガトー・フロマージュは毎日自由が丘で焼き上げている。マスターは今でも自由が丘店のカウンターに立つ。それでも創業の地、原宿店は特別な店だ。アンセーニュダングル(Enseigne D'angle)とは、「角」を意味する。少女が迷い込んだ路地の「角」にその店はあった。彼女の好きな色は赤。店内を見渡せば、鮮やかな赤色をそこらじゅうに見つけることができる。恐らくマスターも赤色が好きなのだろう。カフェと人とは、お互いに惹き合うものなのだろうか。20年前のあの日、出会うべくして出会ったように思えて仕方がない。



■店名:カフェ アンセーニュダングル 原宿店
■住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-61-11 第二駒信ビル B102
■電話:03-3405-4482
■営業時間:10:00~23:00
■定休日:無休


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2011年08月02日

もんじゃ 大木屋 市ヶ谷

西日暮里の有名店「もんじゃ大木屋」。テレビなどで話題となり、数か月先まで予約が取れないほどの人気だという。以前からこの店に行こうと何度も誘ってもらっていたが、予定が合わず参加できなかった。最近は息子さんが市谷に開いた支店のお誘いを受けることが多い。本店があまりにも予約が取れないので、みんな支店の方に流れているのだろうか。今回声を掛けてくださったのは、築地王 小関さん。常連さんが予約してくれているということで、メンバーは小関さんもよく分からないとのこと。誰が来るのか、当日まで楽しみに待つことにした。少し早めに着いて店の前でぶらぶらしていると、B級グルメの柳生九兵衛さんがやってきた。思わぬ再開にビックリ。前回お会いしたのは、ブノワでのレセプション。抜群のトークでテーブルを沸かせてくれた。他には、ブロガーのはっしーさん、東京「駅近」居酒屋名店探訪のカメラマンさん、とある雑誌の編集長さんと、それとは別の雑誌の記者さん(最近話題になったスクープをすっぱ抜いた方)など、なんとも個性的な面々が集まった。

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牛リブロースのステーキ」(エアーズロック) 

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えびと帆立とネギのバター醤油炒め 

予約は独自のルールがあり、多少めんどくさい。2時間制の2回転での営業。1回転目が18時と18時半、2回転目が20時15分と20時半。予約は5名以上でないと受け付けない。食事のメニューはなく、3,500円のコースのみ。こういう「うるさい店」は、逆に人気が出やすいように思う。わざと細かなルールを作ったり、裏メニューや「通の食べ方」を用意することで、人気店を作ることもできそうだ。きっとそんな手法を研究している人もいるんだろうな。もんじゃ大木屋は、知ってか知らずかその種のノウハウに満ちた店だ。

大木屋を有名にしたのは、巨大な肉の塊「エアーズロック」の存在。エアーズロックとは、オーストラリアにある世界で2番目に大きい一枚岩。その姿を髣髴とさせるような分厚いリブロースは800gほどもあるという。ちなみにこのリブロースはオーストラリア産らしい。だからエアーズロックなのか。アメリカ産だったら何と呼ばれていたか?などと勝手に考えてしまう。ただ大きいだけではない。ここでも「うるささ」が発揮される。焼くのは店員さんで、客の手出しは一切無用。とにかく分厚いので、焼き方にコツが必要なのだろう。なんと本店では、焼いているときに勝手に肉に触ると怒鳴られるという。なかなかの「うるささ」。これが全て計算だとしたら、素晴らしいセンスの持ち主だと思う。「エアーズロック」はかなり完成度の高いイベントだ。

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ジャンボメンチカツ 

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もんじゃ焼き 

コースは最初に「かつおのたたき」から始まり、次に「牛リブロースのステーキ」(エアーズロック)、その後もう一度魚介で「えびと帆立とネギのバター醤油炒め」、「ジャンボメンチカツ」、「もんじゃ」と続く。グルメな出席者からは、この組立に疑問の声も上がった。僕が週間現代の「今週のうまいもの番付」に出たという話題になったとき、築地王さんと柳生九兵衛さんが同時に「あ、それ俺もやったよ」と言いだした。参加者の半数が週刊誌の同じ特集に出たことがあるっていうのも面白い。食にうるさい人たちが揃っているということか。エアーズロックが出た瞬間の一般の反応は、「おお~、デカイ!」というのが正解かもしれないが、ここでは「あ~、まあね。そうだよね」。肉質がいいわけでもないし、特別デカイわけでもない。肉を食べなれた人ならこのサイズは大きいとは思わない。本場のローストビーフの巨大さなんか全くの別次元だし、7人分なんだからこのくらいはあるだろうと、感動は少ない。ただ、この店では、この豪快さをイベントとして素直に楽しむのが正しい態度。「まあ、そうだよね」という冷めた態度はホストに失礼というものだろう。ここは町のもんじゃ屋。そのことを忘れてはいけない。「コンパにいいですよ」。今回予約してくれた常連さんが言うように、非常に多くの「仕掛け」が施された店だと思う。コンパで盛り上がるのは間違いない。

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もんじゃ焼き

ジャンボメンチカツは、山盛りのきゃべつに巨大なメンチカツが埋まっている。これもイベント的な要素が満載。もんじゃはこれまた巨大なボールで出てきて、混ぜるのが大変なほど。これをわざわざ客にやらせるのも演出上手だと思う。このボール1杯で鉄板前面に広げて2回分ある。最後のこのタイミングでこの量は異常だ。味は単調なソース味。食べきれないほど。この店はアトラクションとして誰もが楽しめるところがいい。これだけ食べて3,500円なら文句を言う人はいない。3,500円でコスパがいいというほどではないが、妥当な値段だと思う。




■店名:もんじゃ 大木屋 市ヶ谷店
■住所:東京都新宿区市ヶ谷砂土原町3-2-1 市ヶ谷フラッツB1
■電話:03-6228-1676
■営業時間:17:00~23:00(L.O.22:30)
■定休日:日曜日、祝日


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