2011年10月24日

お好み焼き はつせ 大阪

大阪といえば、昔フグをたらふく食べた思い出がある。なんといっても大阪のフグ消費量は日本一。その量は全国消費量の6割に達するという。全国で消費されるフグの8割は下関で水揚げされる。そのすべてが下関でとれているわけではなく、他所でとれたものも一旦下関に集められて、「下関のフグ」として売られているそうだ。そしてそのフグの大半は大阪に送られる。

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子供の頃、大阪で腹いっぱいにフグを食べたとき、店のオーナーらしき人物にそんな話を聞いた。大阪はかつて「天下の台所」といわれた土地。下関のフグの大半が入ってくるということだけでも、食の豊かさを感じる。だからといって、大阪を食の街というと、ちょっと違うような気もする。お好み焼き、たこ焼き、串カツなどに代表される食文化には個性がある。でも大阪の魅力は食自体にあるのではなく、その風土にあるのではないか。大阪で食べるからお好み焼きはうまい。味云々よりも、風土や文化にひたることでより深く「味わう」ことができるような気がする。

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千日前の老舗お好み焼店「はつせ」。明治に「はつせ旅館」を創業。戦時中一旦廃業するものの、昭和20年「はつせ食堂」として再開した。お好み焼き店だが、旅館時代の名残りで全席個室のスタイルを貫いている。個室は、2人、4人、8人、16人、40人用の部屋まで様々なタイプが用意されている。個室はお世辞にも清潔とは言えないが、メニューなどが壁一面に貼られていて、雑然とした雰囲気が大阪らしい。壁にはコース、オリジナルミックス、トッピング、デラックスシリーズなど大量のメニューが書かれていて、何を注文しようかかなり迷う。ビジュアルなメニューなのに、一目でその違いが伝わってこない。オリジナルミックスもデラックスシリーズもお得な気がするし、さらにトッピングも追加するとゴージャスなお好み焼きになりそうな気がする。コテコテとしたメニューからは、何を頼んでも「お得な」感じがひしひしと伝わってくる。

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豚、イカ、えびの入ったミックス玉(980円)にした。メニューには焼き方が丁寧に解説されている。トッピングには、「まぜる」「はさむ」「のせる」というやり方があるそうで、「そのまままぜる」、「焼いてからまぜる」、「生地にはさむ」、「生地の上にのせる」というのは全然違うそうだ。トッピングには、それぞれベストの食べ方があるので、お店が進める通りに焼いてほしいということが熱っぽく語られている。牛すじモダンの作り方、豚玉の作り方、あっさりヘルシーMIXの作り方、焼きそばの作り方などなど解説があり、ホームページには動画まである。ここまでやっても、僕らのようなよそ者の焼き方には歯がゆい思いをすることだろう。

焼き方だけでなく、材料にもこだわっている。ソースは「ウスター系と、甘口特濃ソースを二重にかける『ダブルソース』。研究に研究を重ねた二種類のオリジナルソースは千日前はつせの看板」だそうだ。さらに生地も、「厳選された四種類の粉を和ダシと合わせた秘伝の生地は、表面はパリっと!中はふっくら仕上がるように工夫されています」。でも僕はそこまでの違いは感じなかった。お店は品質やこだわりをアピールするものかもしれないが、食べる側からすると、逆にこのジャンクな味が正しいお好み焼きの姿のような気がした。ソースの研究をいくら重ねても、厳選された四種類の粉を 和ダシと合わせても、そういうものからはこのお好み焼きらしさは生まれない。「お好み焼きって、こういうものなんだな」と妙に納得した。

東京でお好み焼きを食べて記事を書くと、必ず関西の人から「本場は違う」というようなことを言われる。やはり大阪の人はお好み焼きにはうるさい。東京の食に関しては僕も似たような感覚を持つことがある。東京で博多ラーメンを食べると、たいてい本場とは全然違う。これはもう全くの別物だ。なぜ博多の店が東京に出て来るだけでこうも味を変えてしまうのか。僕の実家では、女性はまずラーメンを食べない。豚臭いからだ。店に入るのも嫌がる、というのが正常な反応で、ラーメン好きな女子というのは、昔はほとんどいなかった。今ではラーメンは女性にも浸透している。女性が変わったということもあるが、ラーメンが変わった部分の方が大きいように思う。同様に、お好み焼きも東京に行くと変わってしまうのだろう。それはものすごく理解できる。

それでも、大阪の人の言う「本場は違う」という感覚は僕には分からない。たぶん口で説明するのは難しいのだろう。博多ラーメンや讃岐うどんについても同様で、地元の人が持っているイメージについて、いくら議論しても伝わらないものは伝わらない。やはり経験を通じて肌で感じるしかないのかなという気がする。




■店名:大阪の味 お好み焼 千日前はつせ
■住所:大阪市中央区難波千日前 11-25 はつせビル2F
■電話:06-6632-2267
■営業時間:11:30~24:00(LO23:00)、土日祝11:00~24:00(LO23:00)
■定休日:年中無休


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2011年10月18日

ニュールンベルグ 有馬温泉

実家をあとにして、次に向かったのは食い倒れの街大阪。この日は大阪に泊まるのだが、チェックインまでには時間がある。宿に一旦荷物を置かせてもらって、近場に出掛けることにした。目指したのは、有馬温泉。温泉好きとしては、近くまで来たら押さえておきたい温泉街だ。宝塚まで電車にのって、その後はバスで長いこと揺られてようやくたどり着いた。狭い道を大勢の人が移動している。その間を縫うようにバスは目的地へと進んだ。有馬温泉は日本最古の名湯。この温泉を訪れた有名人も多い。古くは飛鳥時代に舒明天皇が長期間静養されたとの記載が日本書紀にあるという。僕らがよく知るところでは、豊臣秀吉、井原西鶴、福沢諭吉など。谷崎潤一郎の『猫と庄造と二人のおんな』の舞台もこの温泉街なんだそうだ。

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今では多くの宿に温泉が引かれているが、戦前までは「元湯」とよばれる外湯が1つあるのみだった。2002年に開館した「金の湯」は、有馬温泉発祥の地。鉄分が多く、赤い濁り湯。浴槽は42度と44度の2種類があった。人が非常に多くて、なかなか浴槽に入れなかった。温泉街のど真ん中にある外湯だけに、中も外も人が多い。金の湯の目の前には、立ち飲みのバー、ニュールンベルグがあった。温泉街に向かう坂の途中にあり、湯上りの人たちが一杯やりにきている。僕らもここに寄ることにした。

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ソーセージ盛り合せ(800円)をたのむことにした。ニュールンベルガーソーセージが1本、フランクフルト1本に、ポテトフライとピクルスがついたセットだ。ソーセージは手作りだそうで、かむと肉汁があふれ出る。うまいソーセージだった。ニュールンベルガーは、荒引きでスパイスが効いたドイツのニュールンベルグの名物。有馬の温泉たまご(120円)は、有馬の湯の塩味がついた温泉たまご。有馬温泉の湯は、日本一塩分濃度が高い温泉だという。海水の2倍ほどの塩分濃度があるらしい。

ニュールンベルグはバーというよりも、ドイツビールとソーセージを主体としたパブのような店だ。目の前の坂道をゆく人たちを眺めながら、のんびりと酒が飲めるのがいい。狭いところにぎっしりと人が詰まったような有馬温泉にあって、ここだけは落ち着ける場所のような気がした。

フィッシュ&チップス(600円)を追加で注文、帰りに六甲牧場のソフトクリーム(350円)も食べてみた。牛乳らしい風味に上品なコクがくわわったソフトクリームだ。ソフトクリームは昔から大好きで、地方で見かけたらかなりの確率で食べてしまう。ここのソフトクリームはかなり気に入った。




■店名:Bar Nurnberg (バーニュールンベルグ)
■住所:兵庫県神戸市北区有馬町797 有馬玩具博物館1F・B1F
■電話:078-904-0551
■営業時間:10:00~22:00
■定休日:不定休


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2011年10月14日

駒どり 英彦山

小さい頃、夏休みになると実家に親戚が遊びに来た。家で遊ぶことに飽きると、どこかに出掛けようという話になるのだが、そんな時は近場の英彦山に遊びに行くことが多かった。英彦山といえば、昔は日本三大修験山(吉野・熊野・英彦山)のひとつに数えられた修験道の山。彦山に「英」の字をつけて呼ばれるほど尊ばれた。僕にとって英彦山は、子供の頃、石段を休みなく登った厳しい思い出と、夏休みに近くを流れる英彦山川で川遊びをしたり、ホタルを見に行ったりした楽しい思い出がある。大きくなってからは、駅前(といっても彦山駅という山の中にある小さな駅)にある「英彦山食堂」で食べた、鮎やヤマメの塩焼き、鯉こく、鯉のあらいなどが思い出される。英彦山食堂は店の裏側が絶壁になっていて、下に英彦山川が流れる。鮎が足りなくなると、「ちょっと釣ってくるから待っててね」と、ご主人が川に下りて行って2~3匹釣ってきて塩焼きにするというようなことをほんとうにやっていた。

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兄の家族と一緒に、久々に英彦山を登ってみた。中腹にある奉幣殿まではロープウエーで登ることができる。昔はここまで歩いて登ったので、奉幣殿といえばほんとに中腹という感じだった。池の中にはニジマスがいた。普通は鯉か何かがいるものだが、亀と一緒にニジマスが泳ぐ姿は不思議な感覚だ。英彦山の上宮は標高1,200mのところにある。奉幣殿から先が本格的な山登りになる。神武天皇の東征の折、東征を図ったのがいまの奉幣殿、天忍穂耳命(アメノオシホミミ)を祭ったのが上宮だと、古事記にも記されているという。そのくらい古くから知られた山だった。

僕らは上宮は目指さず、鬼杉に向かう山道に入った。鬼杉というのは、樹齢1,250年といわれる根回りが14mもある大木だ。山道は歩きやすく、散歩にはちょうどよかった。ところどころ小川が流れていて、山道なのに沢蟹が歩いているという奇妙な道だった。道は徐々に険しさを増し、アップダウンが激しくなってきた。ちょうど疲れてきたころ、山の斜面を登りきったところに標識が立っていた。奉幣殿からは0.9km、ここから鬼杉はあと1.8kmもある。これほど歩いてまだ1kmにも満たないとは。この標識を見て、力尽きる思いがした。黙ってついてきた子供たちも、そろそろ限界の様子。ここで引き返して、食事に行くことにした。

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僕のリクエストはもちろん英彦山食堂。ところが兄によると、昔よく行っていたのは、その隣にある「駒どり」だという。どちらも似たような雰囲気の店で、2軒並んでいるから紛らわしい。というか、どちらでもさほど変わらないような気もする。要は、鯉こくや、せごし、あらいなどが食べれればどこでもいい。やまめ定食(竹)(1,350円)は、やまめ塩焼き、とうふ、鯉汁、ご飯のセット。これに刺身をつけると、松(2,050円)になる。
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面白いのは、うなぎ丼(1,400円)だった。タレで真っ黒になったご飯に、うなぎがたっぷりと載っている。こんなところで、こんなジャンクな丼を食べることになるとは考えもしなかった。なんでも注文してみるものだ。

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鬼杉を見ることはできなかったが、後日、行者杉と呼ばれる英彦山にある巨木群を見に行った。樹齢が600年にもなる巨大な杉が並んでいる。昔、英彦山で修験道が盛んだった頃、修験者が入山するときに杉の穂を植える習わしがあったという。その杉が育ったのが今の行者杉。鬼杉とくらべると大きさはずいぶん違うが、それでもものすごい迫力があった。今度帰ったら、本格的な山登りの用意をして、鬼杉を見に行こうと思う。



■店名:やまめ・鯉料理 駒どり
■住所:田川郡添田町大字落合804
■電話:0947-85-0745
■営業時間:10:00~1900
■定休日:水曜日


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2011年10月11日

大はら茶屋 日田

自分の田舎でも何でもないのに、妙に落ち着く場所がある。僕は福岡県出身だが、大学生の頃はよく日田にドライブに行った。日田に行くには、うねるような山道を越えていかなければいけない。直線距離だとたいしたことはないのだが、山道を通るか迂回をするか、いずれにせよちょっとしたドライブになった。

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夏、やな場で食べる鮎はなんともいえない楽しさだった。梁漁(やなりょう)は、木や竹で組んだ「梁(やな)」と呼ばれる巨大なざるのようなものを川に設置し、魚がかかるのを待つという原始的な漁法。特に鮎には効果的とされる。川だと思って泳いでいたら、突然すのこの上に打ち上げられるという、鮎にしてはやりきれない仕掛けだ。日田のやな場も昔はこうして鮎をとったのだろう。その場で串刺しにして炭であぶる。やなの隣は細長い木造のテラスのようになっていて、そこで焼きたての鮎を食べることができる。今では養殖の鮎を使っている。形だけになったやなは、子供たちの遊び場だ。時々ほんとうに鮎がかかることもあるが、それで商売ができるほどの量がとれるわけではない。日田と言えば昔は天領で、水がおいしく、文化的にも興味深い土地だ。温泉などもあるが、僕らは特に目的もなく街中を散策するのが好きだった。

友人と4人で大はら茶屋に向かった。店の場所は非常にわかりづらく、地元の人が一緒でなければたどり着けないようなところにあった。大原八幡宮がある山のわきに細道がある。山を回り込むように上に上に伸びている。うっそうと木々が茂るその道を上ってゆくと、八幡宮を中心に敷地に沿って回り込むように裏山の上に出る。その坂を上りきったところに、大はら茶屋の入口があった。竹藪をより分けるように作られた入口には、木の看板が掲げられている。そこから石段をずっと下まで下りていくと玄関があった。建物は築数百年の古民家で、重厚な落ち着きがある。予約した席は窓際にあった。大きく開けられた窓からの景色は一面の竹林。竹林を通して青白い光が差し込み、幻想的な雰囲気に包まれている。建物自体が竹林に囲まれていて、風で竹の葉がすれる音以外は何も聞こえない。静かな時間が流れている。

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名物の「花てぼ弁当」(2,420円)は、山里の幸を十数種類竹かごに盛り込んだ点心弁当。日田では、柄のついた竹かごのことを「花てぼ」という。日田には独自の文化があり、食も魅力的だ。田舎でありながら、文化的な香りがするところがいい。そのへんが僕が日田を愛する一番の理由だと思う。大はら茶屋は、湯布院の亀の井別荘の料理長をされていた方が地元で開いた店。料理には定評がある。花てぼ弁当を人数分と、地どりくわ焼き(1,600円)を注文した。「放ちがいの地どりをくわの上で焼きながら・・・・・・」とメニューにはある。「くわ」とは、「桑」のことだと勝手に思っていたら、「鍬」の柄が運ばれてきた。そうか、鍬の上で焼く農家の料理なのか。桑の香りを移した上品な料理を想像していただけに、これはかえって面白く感じた。

デザートに、くずきり(700円)も注文した。吉野本くずを使用している。奈良の吉野地方は、上質の水、気候など葛粉の精製に適した土地。吉野本くずは「吉野晒し」という伝統製法で作られている。豊かな風味や透明な質感で知られる逸品だ。

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大はら茶屋を後にして、日田市街に出掛けた。江戸時代天領だった日田は、経済的にも非常に栄えた土地だった。中でも豆田町には御用達の商家が集中し、今でも古い蔵屋敷などが並ぶ観光地になっている。薫長酒造には、元禄15年(1702年)に建てられた酒蔵が今も残っている。5棟の蔵はすべて当時の姿で残っており、今でも清酒や焼酎の製造を行っている。

ふらっと立ち寄っただけだが、蔵の中を自由に見学することができた。道路を挟んだ向かいには、天然酵母のパン工房「KOGURA」があり、パンやコーヒーを楽しむことができる。豆田町の街をぷらぷらと散歩して、この店に入った。途中で休憩を取るにはちょうどいい店だった。



■店名:大はら茶屋
■住所:大分県日田市田島2-656-6
■電話:0973-24-7577
■営業時間:11:00~16:00 ※花てぼ弁当が売り切れ次第閉店


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2011年10月04日

伊勢うどん まめや

善光寺のお朝事に参加した後、宿坊ですばやく朝食をとり、タクシーで長野駅に移動した。長野駅から特急ワイドビューしなのに乗って、3時間かけて名古屋に向かう。この日の最大のポイントは名古屋での乗換だった。観光しながら、その日のうちに実家のある福岡に帰る。移動距離が長いので、予定通りの列車に乗りついでいかないとスケジュールが成立しない。名古屋での乗換時間は数分しかない。昨年も名古屋に来たので、駅の周辺はなんとなく覚えがあった。それでもバタバタと走り回って、なんとか予定通りの電車に乗ることができた。宿坊を出発してから5時間後、ようやく伊勢市駅に到着した。

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伊勢神宮に参拝するために伊勢にやってきた。でもその前にどうしても食べておきたいものがある。もちもちとした極太のうどんに、真っ黒なたれ。強烈な個性を放つ伊勢の名物「伊勢うどん」だ。

伊勢市駅から歩いて5分ほどのところにある、伊勢うどんの老舗「まめや」。大正12年(1923年)創業、今年で86年になる。まめやは伊勢うどんの元祖と言われている。伊勢うどんの歴史は古く、江戸以前から地元の農民が食べていたうどんが元になっており、400年の歴史があるという。

まめや以外にも古くから伊勢うどんを出している店はある。創業100年を超える老舗もある中、まめやが元祖と言われるのは、「伊勢うどん」と命名したのがこの店だからだ。永六輔さんが命名したという説もある。永六輔さんがはじめて食べた時に「これは伊勢うどんだ」と言ったのが昭和47年頃。まめやのHPによると、「伊勢うどんは昭和42年、名古屋のメルサに赤福や魚九らと共同で出店した時「伊勢うどん」と名付けたのが始まり」とのこと。数年の前後はあるにしても、ほぼ同時期だ。でも元祖はやはり飲食店であるべきだと僕は思う。お客さんが何と呼ぼうと、メニューを掲げるのは飲食店なのだから。

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名物の伊勢うどんは510円。シンプルで値段も安い。伊勢うどん以外にも丼ものは充実している。天丼、かつ丼、親子丼、牛丼、讃岐うどん、中華そば、ぞうにきしめんなどもある。夏ということもあって、かき氷の種類も15種類以上が用意されていた。セットもいろいろとある。伊勢うどんとミニ丼(1,150円)、ざるそばとミニ丼(1,300円)、ざるそばとかつ重(1,500円)など、とにかく何でもありだ。

東京で「伊勢うどん」を掲げれば、当然、伊勢うどんが中心で、その他のメニューは申しわけ程度に置かれるだけだろう。とてもじゃないが、「まめや」ほど多くの種類は出せない。伊勢うどんのまめやに、讃岐うどんまであるとは。なんとも微笑ましい。

伊勢うどんとサラダ(740円)、デラックス伊勢うどん(1,300円)を注文した。デラックス伊勢うどんは、大海老の天ぷら、山菜、めかぶ、玉子焼きなど大量の具がのったボリューム満点の一杯。伊勢うどんの魅力はシンプルさにあるが、まめやの魅力はデラックスの方から伝わってくるような気がする。

極太のうどんはコシが弱く、もっちりとした食感。そこに甘辛い真っ黒なタレがかかっている。これはスープではなく、タレという表現が正しいのだろう。こんなうどん見たことがない。他のうどんとは明らかに一線を画している。正直、ここまで個性が強いとは思わなかった。うどんのような作り方で、どちらかといえばうどんに近い見た目なのに、全然うどんじゃないみたいなのだ。なんだか騙されているような気にもなってくる。

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駅から歩いて5分とはいえ、今年の灼熱の日差しの下では歩くだけで疲弊する。店に入って、汗をふきふきしているところに出てきた伊勢うどん。そのビジュアルを見て、しばし思考停止した。麺は冗談のように太く、これまた冗談のようにコシがない。タレを少しなめると甘辛い。「これは成立するのだろうか?」。すでに成立してしまっているものを前に、自分の中で咀嚼するために頭をひねる。疲れた頭で、何度も「なぜ?」「なぜ?」と問いかけながら麺をたぐった。「紀州の宗田節・ムロアジとたまり醤油を使用した秘伝のたれ」というが、確かにそうなのだろう。ただ、そんなに上品なものではない。この味は限りなくB級に近い。日本中のご当地グルメの中でも、相当なインパクトを残せる、うどんだと思う。

伊勢市駅のロッカーに荷物をあずけると、ちょっと身軽になった。実はロッカーに空きが全くなくて、しばらく途方に暮れていた。その時、荷物を取りに来た人が、もし来なかったらと思うと恐ろしくなる。伊勢神宮の外宮、内宮に荷物を持っていくのはつらい。しかもこの猛暑のなかで。考えるだけでもぞっとする。外宮と内宮は、思った以上に離れていた。バスで移動してもけっこうな時間が掛かる。夏バテにならなかったのは、伊勢うどんを食べたおかげかもしれない。いま考えると、そんな気がしてくる。




■店名:めん類れすとらん 伊勢まめや
■住所:三重県伊勢市宮後2-19-11
■電話:0596-23-2425
■営業時間:10:00~19:30(L.O)
■定休日:火曜日(火曜水曜連休あり)


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