2015年11月10日

おでん 呑喜(のんき) 本郷

おでん 呑喜(のんき) 本郷
久々に東大前の老舗おでん屋、呑喜に行ってきた。呑喜は明治20年創業、来年で130年にもなる老舗だ。今のご主人は4代目で、残念ながら跡を継ぐ人はいない。今のおでんの考案者は呑喜の2代目。江戸時代の「田楽」を、たっぷりのつゆの中で煮る現在のスタイルにしたのは呑喜だ。それがいまの「おでん」のスタンダードになった。

高齢のご夫婦で営業されているので、いつも呑喜のことが気になって仕方がない。著書『東京「駅近」居酒屋名店探訪』に書かせてもらってから、もう4年がたった。長年変わらない部分もあるが、たまに行くと少し変わっていたりもする。昔から8月は1か月休むので、9月に入ってすぐに訪問。平日は16:30~21:00の営業なので、19時前に着くようにした。

まずはビールをお願いする。キリンとサッポロがある。まずはキリン、2本目はサッポロした。鍋の中をのぞき込むと、ご主人が説明をしてくれる。玉子、袋、ガンモ、ボールあたりからはじめる。袋の中身はすき焼きの具だ。玉子はよく味がしみていた。玉子は途中で入れると10分ほどで完成するが、やはり長時間鍋に入っていたものは格別だ。ガンモはいつ食べてもうまい。この日も結局2つ食べることになった。

おでん 呑喜(のんき) 本郷

おでん 呑喜(のんき) 本郷

鍋の横に張り付いたようになっている燗つけ器はずいぶんと古いものだ。熱燗を頼むとこの中に徳利を入れて燗にしてくれる。いつもぬる燗だ。その横に徳利が3つほど並んでいて、すでに酒が入っている。これも呑喜の様式美だと思う。

ご主人はまだしっかりとされている。お店が落ち着いてきたので少しお話をした。「今年も8月はお休みでしたよね。東大が休みだからですか?」「そうそう、昔はおでん屋風情がそんなに休むのかとか言われてねえ。日曜日以外は休んでないからその分まとめてるだけなんだけどね」と笑う。

「代替わりして何年になりました?」「60年ですね。親父が亡くなって52年だから。数年は一緒にやったんですよ。でもね、代替わりした後、味が落ちただの、何が変わっただのいろいろ言われてね。でも何にも変わってないんだよ。親父がいた時も最後は俺がやってたんだから。一緒なのにね」と、これまた楽しそうに笑う。昔は頑固で少し怖い感じの印象だったが、最近は気楽な感じでよく笑うようになった。

おでん 呑喜(のんき) 本郷

おでん 呑喜(のんき) 本郷

数年前までは客とまともに話もしなかった。以前ブログにも書いたけど、僕らの隣に座った人が息子さんと2人で来ていて、「こいつせがれです。30年ぶりなんですよ」とご主人に言うと、「そうですか」と言ったきり全く関心を示さなかった。嬉しいには違いないんだけど、そこで「いやあ、そうですか。ありがとう」とは絶対にならない。そこがこの店のいいところなんだと思う。

僕は何故か気に入られて、いろんな話をしてもらった。ご主人が好きな話題の資料がいくつかあって、最後客が僕らだけになると必ずそれが出てきて講釈が始まった。ちくわぶの話とか、信田巻きの話とか、落語の話とか。最近出てこないけど、あの資料はまだあるのだろうか。

おでん 呑喜(のんき) 本郷

おでん 呑喜(のんき) 本郷

蕗、豆腐、はんぺん、ゴボウをいただく。呑喜のつゆは真っ黒な色だが、味は薄味でさっぱりとしている。食後に調味料の変な感じが残らないのがいい。それから、つみれ、玉子、さつま揚げ、里芋、スジ、コンニャク、ちくわなんかも食べた。芋はジャガイモはなく、里芋など3種類くらいを季節ごとに出している。大根も元々賄いだったものを出すようになったが、それでも「大根は冬」ということで冬にしか出さない。4ヶ月くらいしか鍋にはなくて、春になると筍に代わる。

おでん 呑喜(のんき) 本郷

おでん 呑喜(のんき) 本郷

最後はいつものシメ、茶飯をいただく。一緒に出てくるおしんこはいつも通りのおいしさだ。奥様は、以前はずっと奥にいて、茶飯を出すときは顔を見せていた。今はお店の奥に座っていて、ご主人のフォローをされている。最近踵を骨折されたそうで辛そうだが、お二人ともまだまだ元気だ。真っ赤な口紅とマニキュアは昔から欠かさない。

昔住んでいた西片や本郷のあたりを歩いてみた。このあたりも少しずつだが昔とは変わっている。本郷館がなくなったのはずいぶん前なのでもう慣れたけど、春日駅前の古い豆腐屋が閉めたのは未だにショックだ。朝5時頃通りかかると、とっくに掃除を済ませて開店を待つような昔ながらの真面目な店だった。豆腐の味は、僕が知っている中ではベスト5に入る。そういう店も、食べたいと思った時にはもう無くなっているものだ。古くていいものは無くなるけど、新しくていいものはほとんどできない。よく通った自然食品の店が閉めて、コンビニになっていたり。呑喜にはまだまだ続けてほしいと思う。

【以前の記事】
呑喜 本郷

■店名:呑喜
■住所:東京都文京区向丘1-20-6 ファミール本郷1F
■電話:03-3811-4736


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