寿命延(じょんのび) 野沢温泉

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宿泊したのは湯宿 寿命延(じょんのび)というホテル。大湯のすぐ横という絶好の立地だった。寿命延という名は、温泉と美食で寿命が延びるほどの癒しを与えてくれるということらしい。確かに温泉はいいし料理も気がきいている。かなり満足度の高いホテルだ。寿命延に泊まっているとツイッターなどでつぶやいたら、いつもお世話になっている白金の大阪割烹のご主人から夜中に電話があった。「くにさんが泊まってる寿命延って、うちの奥さんの実家が経営してるんですよ」。嘘のようなほんとの話。あらためて世間は狭いなあと思う。そのご主人も野沢温泉のファンになってよく出掛けているという。
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道祖神祭りをモチーフにした和モダンなデザインが印象的なレストラン「火祭り」は、宿泊客以外の人も利用することができる。ちなみに宿泊したかどうかは知らないが、ある大物芸能人が同じ日に火祭りで食事をしたらしい。野沢温泉の中でも最も質の高い料理を楽しめる店のひとつなのは間違いないだろう。僕も年に数回は旅行するけれども、ホテルの食事にはほとんど期待していない。最近では、そんなにおいしくなくてもいい、せめて地のものを食べさせてほしいと思うようになった。観光客のウケを狙った中途半端な料理は食べる気がしない。むしろ地元の人が食べるようなものをそのまま出してくれた方がいい。寿命延の夕食は素晴らしかった。地域性を大切にしながら美しくおいしい料理を供している。こういう料理であれば、わざわざ野沢温泉にまで来た甲斐があるというものだ。
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あん肝、小芋黄身焼、柿羊羹、にじます唐揚げ
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信州名物鯉洗い辛子酢味噌、大鱒吟醸漬、山女魚昆布〆
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芋膾、薇煮〆
信州名物の鯉洗いはくさみがなく質の高いものだった。滋養の高い鯉は昔からタンパク源として内陸の山間部で重宝されてきた。僕の実家の方にも鯉を食べる地域があるが、たまに東京とかで食べるとビックリするくらいの違いがある。寿命延の鯉の洗いを食べると、鯉の生食は信州の食文化として定着しているのだということがよく分かった。
おやきには野沢菜が入っていた。こういうところにも地域性を感じさせてくれる。食材は信州のものが多く使われている。たとえばすき鍋に使われている「信州福味鶏(しんしゅうふくみどり)」は、平飼いで飼育された高タンパク低カロリーな信州ブランド鶏。美雪の豚根菜巻に使われているのは、産地銘柄豚「みゆきポーク」。信州を代表するブランド豚だ。みゆきポークの特徴はいくつかあるが、コクのある肉質、高品質の脂肪などは飼料による影響が大きいという。飼料はキャッサバなどの芋類、麦などの穀類をベースにした特別配合飼料。たった5軒の養豚農家だけが飼育をしていて、ほぼすべてが地元の北信濃で消費されるという県外の人から見れば幻の豚だ。
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信州福味鶏すき鍋
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水尾 辛口、水尾 純米大吟醸
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美雪の豚根菜巻き、彩々野菜添え
日本酒は地元信州の酒、水尾が2種類。水尾は野沢温泉の湧き水で仕込んだ地酒ということで、このツアーにはもってこいの酒だ。「水尾 辛口」は長野県産の「ひとごこち」を麹米に使っている。さっぱりとした味わいの中にほんのりと香る、地元で人気の酒だ。もう一つは「水尾 純米大吟醸」。こちらも地元の米を使っている。長野県木島平村産の希少品種「金紋錦」だ。これは日本酒としてはかなり高級な酒で金額でいうと辛口の4倍くらいはする。でも僕はどちらかというと辛口の方が好きになった。これが日本酒の面白いところで、高い方が絶対にうまいというわけではない。辛口は1升瓶でたったの1,800円。日本酒は手間暇かけてる割に値段が安い。高い酒というのは、材料や製法にこだわる姿勢に対して払うというか、その心意気を買うような部分があると思う。特殊な米を使った際の酒造りの難しさは大変な苦労だ。山田錦とか雄町とか五百万石とかを使っておけばある程度計算できるものを、あえて希少品種「金紋錦」に挑戦する姿勢には4倍の値段を払ってもいい。というかそれでも日本酒って安いなと思う。そうそう、「野沢菜蕪(かぶ)焼酎」というカップ酒もいただいたんだが、これは4年くらい前に開発されて新聞等で話題になった焼酎。どこかで見かけたらまた飲んでみようと思う。
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野沢産こしひかり きのこあんかけ飯
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おやき
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自家製胡麻プリン
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野沢菜漬け
寿命延の温泉は外湯と変わらないほどの泉質だと思う。と思って調べたら、麻釜(おがま)のかけ流しだという。それはいいに決まっている。外湯巡りに疲れたら寿命延の温泉にも入ってみるのもいい。草津温泉でも有名な湯もみをするための板、湯もみ板が置いてあった。源泉の温度が高い場合、湯船の温度を下げるために何らかの工夫をしなければならない。温度を下げるために加水をしている温泉も多いが、加水したくなければお湯を少しずつ出して冷めやすくする。ちょろちょろと温泉が出ているのはケチっているわけではなく、品質にこだわっているためだ。ただ、温泉は空気に触れると劣化がはじまるので、長い時間空気に触れさせないために加水して温度を下げている場合もある。加水しているからダメというわけではないのだ。温泉は奥が深い。
理想は湯船でちょうどいい温度になるような条件が揃っていることだが、なかなかそうはいかない。だから昔から様々な工夫をしてきた。湯もみ板もそうした工夫のひとつで、湯を冷ますための道具だ。ちなみに女性浴場は湯船の底から温泉が自噴しているという。僕が好きな法師温泉も湯船の真下から自噴している。先ほどの理屈でいうと、湧出地と湯船は近い方がいい。湯船の真下から自噴するいわゆる足元自噴泉はひとつの理想形だ。足元自噴泉は全国にあるが、女性浴場のみというのはここだけではないか。ぜひ男性にも開放してほしいものだ。
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寿命延の内湯
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湯もみ板
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寿命延の前には誰でも利用できる足湯もある
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寿命延1階のバー火祭り
1階にあるバー「火祭り」は雪景色を見ながら酒と料理が楽しめる。宿泊客以外も利用することができるバーだ。「水尾」を種類豊富に揃えているのも嬉しい。温泉、食、酒と、寿命延は何から何まで僕の感性にぴったりとくるホテルだ。これはもう野沢温泉での定宿にしたいくらいの相性の良さなのであった。
長野県スキー場情報総合ポータルサイト
NAGANO SNOW LOVE. NET

■店名:湯宿 寿命延(ゆやど じょんのび)
■住所:長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9288
■電話:0269-85-1230

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