両親が上京してきたので、食事に行くことになった。昔はよく家族で外食をした。定番は寿司や焼肉で、ほとんど毎週のように出掛けた。今30代の僕が肉をあまり食べなくなったことを考えると、うちの親はあの歳でよく焼肉を食べてたなと思う。飲食店との付き合い方は両親から学んだ部分が多い。たいていどの店ともすぐ仲良くなって、いい関係を築いていた。焼肉店で「これ食べてみて」と店主が希少部位を持ってきてくれたり。そんな店との関係は小さい頃からずっと変わらない。
両親も最近ではあまり食べなくなった。体調のことも考えて、胃に負担の少ない料理を選んで連れて行くことにした。大塚にある豆腐料理の店ゑん重(えんじゅう)。この店は昔からある豆腐屋で、花街として栄えた大塚にあって古くから料亭などに豆腐を卸している。僕も何度か買いに行っておじさんもおばさんもよく知っている馴染みの店だ。「とうふ家えん重」は豆腐屋の隣で息子さんがはじめた店。息子さんも豆腐を作るが、店ではお父さんが作った豆腐を使っている。
夜のコースは3種類ある。豆の木は10品で3,675円、豆の花は12品で5,250円、豆の夢は14品で6,300円。10月~3月の間はこれに期間限定の湯豆腐膳3,360円も加わる。せっかくだから14品のコースにした。でもこの発想がいけなかった。豆腐とはいえ14品はかなり量が多い。たぶん10品でも十分なボリュームがあるのではないか。そう考えるとコスパはかなりいい。
食前酒、お通し、おぼろ豆腐、小鉢、前菜五種、椀、お造り五点、豆乳の茶碗蒸し、煮物、焼物、揚物、酢物、お食事、デザートという内容。ゑん重の豆腐の個性も活かしつつ、洗練された料理に仕上げている。豆腐を使った素朴な料理を想像していただけに、レベルは期待以上に高かった。
文京区には古い豆腐屋がいくつかあるが、ゑん重の豆腐は特別に美味しい。料亭で出しているだけあって洗練されている。繊細な香りや深い味わいは活かされていて出過ぎたところがない。これほどの豆腐に出会うことは東京では少ないのではないか。
店では京がんもや油揚げもよく購入する。京がんもは軽く炙って食べるとたまらなくうまい。油揚げはそのまま焼いても、味噌汁に入れてもいい。おばさんはいつもおまけをしてくれる。「ちゃんと宣伝しといてよ」と笑う。とにかく笑顔がいい。
このおばさんの弟が近くで居酒屋を営んでいる。ゑん重の豆腐を使っていて、店名も居酒屋えん重という。こちらは地元主体の店だがそのうち行ってみようと思う。
ちなみに江戸料理で有名な大塚の「なべ家」で使っている豆腐もゑん重のもの。三業地として繁栄したの名残のある大塚界隈。まだまだ興味深い店がたくさんある。その割りに注目度がイマイチなのはどういうわけだろうか。このブログだけでも大塚に注目しようと思う。
■店名:とうふ家 ゑん重
■住所:東京都豊島区南大塚1-48-13
■電話:03-3944-1007
■営業時間:11:30~15:00(L.O.14:00) 、17:30~22:00(L.O.20:30)
■定休日:日・祝
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