次の日の昼は杭州飯店に向かった。昔は毎年のように通ったこの店もずいぶん久しぶりだ。以前よりもお客さんが増えたようで、はじめて店先で待たされた。昔からかなりの人気店だったが、席数が多いので座れないということはあまりなかったように思う。接客は明るく丁寧で、店員さんが手際よく席に案内している。どこか僕の知っている杭州飯店とは違う。どうやら代替わりしたようだ。手際のよい誘導は若い店主の陣頭指揮。時代は変わったなと感じた。
時代が変わるのは当然のこととして、ラーメンが変わってしまっては困る。でもまあ変わりますよね。脂ギトギトで強烈な魚介の香りを放っていたスープは、マイルドで食べやすくなった。ゴムのように伸びて手で引っ張ってもなかなか切れなかった麺は、プツリと切れてしまった。要するに普通の人が食べやすいラーメンになってしまったのだ。だからお客さんが増えたのかも知れない。家族連れや女性客も以前はこれほど目にしなかったと思う。
中華そば800円と大盛りそば900円
餃子(4個)800円
数年前までは今のような明るい家族連れのイメージはなかった。杭州飯店のラーメンは元々労働者のためのラーメンで、出前の時麺が伸びないように極太にしたり、背脂を大量に入れたりと工夫をした。これが燕三条系ラーメンと呼ばれるようになったものだが、僕が杭州飯店に通いはじめた頃はそんな話を実感できる雰囲気の店だった。それが今では明るく綺麗なイメージで丁寧な接客。そしてラーメンは食べやすく進化した。お店の方の考え方や努力の跡が見える好ましい進化だ。その進化に微笑ましくエールを贈るとともに、どこか寂しいような感覚が残った。あのパンチのあるラーメンはどこに行ったのだろうか。数年後、再訪する時に復活していればいいのだが。
■杭州飯店
■新潟県燕市燕49-4
■0256-64-3770