ビストロ ブノワ 青山 新メニュー試食

フレンチ

青山のビストロブノワは、11月にメニューと価格の改定を行った。今回の改定では、パリのブノワ本店と同様のメニューを導入し、よりビストロらしくするという。ブノワは質の高い料理を出すビストロとして人気だが、もっと気軽に利用できる店になるという選択肢もあるとは思う。僕はその方がありがたい。そんな中、ブノワの方から、新メニューを食べにきて欲しいというメールをいただいた。これは願ってもないチャンスだ。ブノワの本店はパリで最も古いビストロ。本場のメニューとは、どんなものなのだろうか。
サバのマリネ
“コルベール”鴨のテリーヌ
野菜と豚バラ肉のココット仕立て
ブノワには何度か足を運んでいるが、最近はフードフランス関係ばかりだった。ブノワの料理は小島景氏がシェフに就任した時の、オープニングレセプション以来だ。その時はまだバタバタとしていて、小島シェフの思い通りの料理が出せていないような気がした。あれから1年、どのように変わったのだろうか。小島シェフといえば、モナコのルイ・キャーンズでスーシェフを努めた人物。あのアラン・デュカスが史上最年少でミシュランの三つ星を獲得した店だ。
新しいメニューは3コース。本日のディナーメニューは、前菜+メイン+コーヒーで、3,600円。プリフィックスメニューは、それにデザートが加わり、更に前菜は5種類、メインは4種類の中から選ぶことができる。プリフィックスは、前菜が1品の5,800円と、2品の6,800円の2種類ある。価格はかなりリーズナブルになったようだ。ワインもグラスで650円~、ボトルワインが2,900円~と安くてお得感のあるラインナップ。よりビストロっぽいメニューにするという意図は十分に感じられる。
前菜が2品選べる6,800円のメニューにした。まずは前菜。僕は“コルベール”鴨のテリーヌと、野菜と豚バラ肉のココット仕立て。同行者はサバのマリネ マスタード風味をチョイス。鴨はシャラン産コルベール鴨(青首鴨)。さっぱりとしておいしい。カリカリのパンが付くのだが、このパンもなかなかうまい。付け合せの焼きリンゴもいい。これはタルトタタンのイメージだそうだ。野菜と豚バラ肉のココット仕立ては、豚肉は少しで野菜がメインの皿だ。鎌倉野菜はブタのソースと絡めて食べると、うまい。
この野菜は小島景シェフが市場で買ってきたものだ。小島シェフは毎朝、鎌倉の市場で野菜を買って、店まで電車で運んでいるという。メインの食材は自分の目で見て、納得のいくものを使いたいということなのだろう。それを毎日続けるのは大変なことだ。そういえばデュカス氏も鎌倉の野菜はいいと以前スピーチで言っていた。カブもセロリもうまいし、ニンジンも甘味が豊富。温かい洋ナシもいい。適度な脂身とソースの甘辛さもいい具合。完成度の高い料理だ。
スズキのソテー
帆立貝のグルノーブル風とクルジュ
洋ナシのコンポート
メインはスズキのソテーとフヌイユのコンフィ ソース ベアルネーズ。これは+500円で注文できる。同行者は、帆立貝のグルノーブル風とクルジュ。スズキのポワレ、アンディーブとアニス(ういきょう)。ベアルネソースは、卵黄を使ったマヨネーズに似たソース。古典料理を代表するソースだ。ちょっと酸味があって、うまい。
帆立貝のグルノーブル風とクルジュも味見させてもらった。クルジュは、クルジェット(ズッキーニ)を摘まずに成長させたもの。そのまま伸ばしていくと、色も味も変わっていくそうだ。これはルイ・キャーンズには欠かせない食材となっている。かぼちゃとズッキーニの間のような味で非常にうまい。小島シェフは鎌倉の農家から仕入れているそうだ。
デザートは7種類から選ぶことができる。洋ナシのコンポート “ベルエレーヌ”にした。半分に切ったガラスのボウルのような器に入れられ、周りに温かいチョコレートソースをかけてもらう。食べ進むと全体が混ざってきて、温かいチョコと、冷たいバニラアイス、生クリームなどが合わさり不思議な感覚になる。チョコは苦めで、甘いのは洋ナシだけ。甘さ控えめのデザートだ。チョコの存在感が抜群でインパクトがある。これはすごく満足感があった。
ビストロ ブノワ
スコットランドに行った時、どの店もメニューは前菜とメインとデザートというシンプルな構成だった。ナイフとフォークを気軽に使う感覚がなんともいい。日本でナイフとフォークを使うのは、かしこまった店ばかり。日本でも力の抜けた感じで食べれるビストロはないだろうか。気軽に使えて、料理の質が高く、でも値段はそこそこという、普段使いできるビストロが欲しかった。ブノワは今回のメニューと価格の改定で、よりビストロらしい店に生まれ変わった。僕のイメージしていたビストロに近い形だ。
品数は少ないがボリュームは十分。さっぱりと食べることができて、しかも満腹になった。食後感は最高だ。最近フレンチを食べると、肉でもたれたり、デザートでだるくなるようなことが多かった。ブノワの料理は、適度な量と控えめな調理で、日本人の口に合っているように思う。
帰ろうとして階段で振り返ると、遅い時間なのにまだお客さんがいっぱい残っていた。ずいぶん会話が盛り上がっているようで、誰も帰ろうとしない。ざわついた店内は居心地がいいし、サービスも気さくでとても楽しい。長居してしまうのも分かる気がした。ブノワはいい店になってきた。価格も下がってリーズナブルになったし、今後は気軽に使えるビストロとして活躍しそうだ。
■店名:ビストロ ブノワ(BENOIT)
■住所:東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山 10F
■電話:03-6419-4181
■営業時間:11:30~16:30(L.O14:30)、17:30 ~23:30(L.O21:30)
■定休日:無休

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