伊勢うどん まめや

うどん そば 丼もの

善光寺のお朝事に参加した後、宿坊ですばやく朝食をとり、タクシーで長野駅に移動した。長野駅から特急ワイドビューしなのに乗って、3時間かけて名古屋に向かう。この日の最大のポイントは名古屋での乗換だった。観光しながら、その日のうちに実家のある福岡に帰る。移動距離が長いので、予定通りの列車に乗りついでいかないとスケジュールが成立しない。名古屋での乗換時間は数分しかない。昨年も名古屋に来たので、駅の周辺はなんとなく覚えがあった。それでもバタバタと走り回って、なんとか予定通りの電車に乗ることができた。宿坊を出発してから5時間後、ようやく伊勢市駅に到着した。
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伊勢神宮に参拝するために伊勢にやってきた。でもその前にどうしても食べておきたいものがある。もちもちとした極太のうどんに、真っ黒なたれ。強烈な個性を放つ伊勢の名物「伊勢うどん」だ。
伊勢市駅から歩いて5分ほどのところにある、伊勢うどんの老舗「まめや」。大正12年(1923年)創業、今年で86年になる。まめやは伊勢うどんの元祖と言われている。伊勢うどんの歴史は古く、江戸以前から地元の農民が食べていたうどんが元になっており、400年の歴史があるという。
まめや以外にも古くから伊勢うどんを出している店はある。創業100年を超える老舗もある中、まめやが元祖と言われるのは、「伊勢うどん」と命名したのがこの店だからだ。永六輔さんが命名したという説もある。永六輔さんがはじめて食べた時に「これは伊勢うどんだ」と言ったのが昭和47年頃。まめやのHPによると、「伊勢うどんは昭和42年、名古屋のメルサに赤福や魚九らと共同で出店した時「伊勢うどん」と名付けたのが始まり」とのこと。数年の前後はあるにしても、ほぼ同時期だ。でも元祖はやはり飲食店であるべきだと僕は思う。お客さんが何と呼ぼうと、メニューを掲げるのは飲食店なのだから。
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名物の伊勢うどんは510円。シンプルで値段も安い。伊勢うどん以外にも丼ものは充実している。天丼、かつ丼、親子丼、牛丼、讃岐うどん、中華そば、ぞうにきしめんなどもある。夏ということもあって、かき氷の種類も15種類以上が用意されていた。セットもいろいろとある。伊勢うどんとミニ丼(1,150円)、ざるそばとミニ丼(1,300円)、ざるそばとかつ重(1,500円)など、とにかく何でもありだ。
東京で「伊勢うどん」を掲げれば、当然、伊勢うどんが中心で、その他のメニューは申しわけ程度に置かれるだけだろう。とてもじゃないが、「まめや」ほど多くの種類は出せない。伊勢うどんのまめやに、讃岐うどんまであるとは。なんとも微笑ましい。
伊勢うどんとサラダ(740円)、デラックス伊勢うどん(1,300円)を注文した。デラックス伊勢うどんは、大海老の天ぷら、山菜、めかぶ、玉子焼きなど大量の具がのったボリューム満点の一杯。伊勢うどんの魅力はシンプルさにあるが、まめやの魅力はデラックスの方から伝わってくるような気がする。
極太のうどんはコシが弱く、もっちりとした食感。そこに甘辛い真っ黒なタレがかかっている。これはスープではなく、タレという表現が正しいのだろう。こんなうどん見たことがない。他のうどんとは明らかに一線を画している。正直、ここまで個性が強いとは思わなかった。うどんのような作り方で、どちらかといえばうどんに近い見た目なのに、全然うどんじゃないみたいなのだ。なんだか騙されているような気にもなってくる。
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駅から歩いて5分とはいえ、今年の灼熱の日差しの下では歩くだけで疲弊する。店に入って、汗をふきふきしているところに出てきた伊勢うどん。そのビジュアルを見て、しばし思考停止した。麺は冗談のように太く、これまた冗談のようにコシがない。タレを少しなめると甘辛い。「これは成立するのだろうか?」。すでに成立してしまっているものを前に、自分の中で咀嚼するために頭をひねる。疲れた頭で、何度も「なぜ?」「なぜ?」と問いかけながら麺をたぐった。「紀州の宗田節・ムロアジとたまり醤油を使用した秘伝のたれ」というが、確かにそうなのだろう。ただ、そんなに上品なものではない。この味は限りなくB級に近い。日本中のご当地グルメの中でも、相当なインパクトを残せる、うどんだと思う。
伊勢市駅のロッカーに荷物をあずけると、ちょっと身軽になった。実はロッカーに空きが全くなくて、しばらく途方に暮れていた。その時、荷物を取りに来た人が、もし来なかったらと思うと恐ろしくなる。伊勢神宮の外宮、内宮に荷物を持っていくのはつらい。しかもこの猛暑のなかで。考えるだけでもぞっとする。外宮と内宮は、思った以上に離れていた。バスで移動してもけっこうな時間が掛かる。夏バテにならなかったのは、伊勢うどんを食べたおかげかもしれない。いま考えると、そんな気がしてくる。

■店名:めん類れすとらん 伊勢まめや
■住所:三重県伊勢市宮後2-19-11
■電話:0596-23-2425
■営業時間:10:00~19:30(L.O)
■定休日:火曜日(火曜水曜連休あり)

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