何年振りだろうか、秋田の「酒盃」に久々の訪問。酒盃は日本を代表する居酒屋のひとつと言っていい名店だ。酒は秋田の酒、料理も秋田にこだわる。秋田は酒もうまいし、食材も豊富な土地だ。その個性的な食文化は特別な輝きを放っている。例えば、いぶりがっこ、じゅんさい、しょっつる、きりたんぽ、とんぶり、ハタハタなど挙げればキリがないが、どれも際立った個性のある料理ばかりだ。
酒盃の料理は、そんな秋田の強い個性には頼らず、控えめでありながら郷土愛に満ちた質の高い料理を供している。
店に着くと、予約した人の名前が下足箱に貼られている。こういう気遣いはいつも嬉しいものだ。部屋は前回と同じ部屋。カウンターの目の前の個室だ。引戸で仕切られていて、お店の人は気軽に出入りできるが、中はとても落ち着いた空間になっている。
店員さんを呼ぶのに少し苦労するが、絶妙なタイミングで様子を見に来てくれるので、ストレスは感じない。部屋にある電話は一度使ってみたのだが、大げさな感じがするのであまり使う人はいないだろう。
この店の日本酒は本当に素晴らしい。冷やでも燗でも出してくれるが、燗を基本にしておすすめの温度でつけてもらう。こういう店に来たら、ごちゃごちゃ言わずに料理も酒もお任せにするのがいい。
料理は4,000円と5,000円のコースがあるが、今回は5,000円にした。前菜、刺身、冷たい茶碗蒸し、天ぷら、蒸し牡蠣とじゅんさい、黒毛和牛の冷しゃぶユッケ、豆腐饅頭、鯛とハマグリのツボ蒸し、手打ち蕎麦。名物の手打ち蕎麦は単品で600円、一日15食限定で予約もできる。コースでなければ頼んでおきたい逸品だ。
長期熟成の古酒や希少酒がいくつか用意されている。雪の茅舎の8年熟成1,200円にした。古酒と言っても1,000円か1,200円、希少酒も800円なので安いものだ。
名店といえど、肩ひじ張らずに楽しめる雰囲気がいい。料理も酒もレベルが高くて、お会計も安い。秋田に来たらこの店に寄らずには帰れないほどだ。秋田駅まで歩いて30分ほどなので、帰りはタクシーでもいいし、冬でなければ酔い覚ましに歩くのも気持ちがいいものだ。
■店名:酒盃
■住所:秋田県秋田市山王1-6-9
■電話:018-863-1547