江戸川橋 うなぎ 石ばし

うなぎ 穴子

「今まで一番おいしかったうなぎは?」と聞かれて真っ先に思いつくのは、四万十川で食べた天然うなぎ。天然ものは元々身が硬いが、蒸さずにそのまま焼くのでさらに硬くなる。しかもしっかりと焼く。こんなもの食えるか!と笑いながら頬張ったうなぎのうまいこと。あれは何だったのだろうか。鮮度がどうの、火加減がどうのというレベルではない。あの川沿いの小屋で食べるから特別うまいのだろうか。
うなぎ
うな重(特上)
酒と豆腐
お通し
お通し
「東京の店で」ということになると、名店がいくつもある。野田岩、尾花という人もいるけれど、僕にとっては断然「石ばし」がいい。なにもかもが僕の好みにピッタリで文句のつけようがない。しかも酒場としての存在感も際立っている。うなぎと言わず、飲食店の中でも最も好きな店の一つに挙げられる。話題の店やら新店やら次から次へと出てくるが、特別覚えておくべき店は少ない。石ばしのような店をいくつか知っているだけで食生活はずいぶんと潤うものだ。
最近僕が好んで飲み歩く店は、いわゆる居酒屋でない店が多い。蕎麦屋にはよく飲みに行く。気のきいたつまみと日本酒、そしてなんといっても最後の蕎麦がいい。燗酒でほんのりと酔うあの感覚。シメに蕎麦が待っている期待感があるからほどよく飲める。蕎麦屋で飲むのは心地がいい。
石ばしで飲むときも同じような感覚になる。注文は予約時に聞かれるが、客が来てから調理を始める。うなぎは焼きあがりに1時間以上かかる。注文を受けてから捌き、一度白焼きをしてその後約1時間かけてじっくりと蒸す。そして最後にもう一度焼く。これだけキッチリとやると、どうしても時間はかかってしまう。でも僕には待たされているという感覚はない。うなぎが来るまで1時間のんびりと飲んでいればいいのだから。そういう意味では、うなぎ屋で飲むというのは理にかなっていると思う。
漬物
漬物
肝吸いと香物
肝吸いと香物
入口
まずはお漬物(800円~)からはじめる。ぬか床は100年の歴史があるという。そんな馬鹿な!と驚く方もいるかも知れないが、一般家庭でもあるところにはあるものだ。実際うちの実家のぬか床も100年以上の歴史がある。一般家庭でもそうなのだから、創業明治43年(1910年)の石ばしにとっては当たり前のことかもしれない。この漬物がまた絶品で味がいい。酒をちびちびと飲みながら漬物をつまむ。そんな飲み方もいいものだ。飲み物にはお通し2品(1,000円)がつく。日本酒は季節ごとにいい酒を揃えており、価格は1,200円が多い。
石ばしはミシュランで星を獲得した名店で、座敷とコース料理などもある。コースは昼が8,000円、夜が11,000円と13,000円の2種類。でも僕はやっぱり居酒屋的に利用したい。座敷で飲むよりもたたきのテーブル席で飲むほうが性にあっている気がする。うな重は、特上(4,000円)、上(3,200円)、並(2,700円)の3種類。香物と肝吸いがつく。うな重と漬物で4~5千円。十分贅沢な時間が過ごせる。並はテーブル席のみ注文可。
石ばしは静岡県吉田町のうなぎを使用。うなぎに余分な脂を残さず、ふんわりと仕上げる。やや辛めのタレがうなぎとご飯によく合う。うなぎの質、調理の質もあることながら、僕の好みにピッタリとくるこの加減。当分これ以上のうなぎに出会うことはないだろうし、その必要もないだろう。

■店名:石ばし
■住所:東京都文京区水道2-4-29
■電話:03-3813-8038
■営業時間:11:30~14:30(L.O.13:30)、18:00~21:00(L.O.19:30) 土曜日11:30~15:00(L.O.14:00)、17:30~21:00(L.O.20:00)
■定休日:日曜・月曜・祭日・土用の丑の日

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