ヨコ井の酢、横井醸造の工場見学に行ってきました。酒・味噌・醤油など、見学ができる工場はたくさんあります。普段飲んでいる酒や調味料がどのように作られているか、実際作っているところで説明を受けるととてもよく理解が出来ます。僕も工場見学は好きですが、あまり行く機会はありません。これまで見学した工場は、スコットランドの蒸留所、山崎蒸留所と白州蒸留所、武蔵野ビール工場など、お酒の工場がほとんど。お酢も製造過程でお酒ができます。これまでの知識を生かせるという意味では、ちょうどいい機会かもしれません。
横井醸造は、大正8年(1919年)創業。長年東京で多くの名店に選ばれてきた、評価の高いお酢です。ミシュランガイド東京2010では、掲載された寿司屋22軒のうち15軒でヨコイの酢が使用されていました。この事実がヨコイの酢の品質の高さを証明しています。寿司屋にとって、酢は最も重要な要素の一つです。現代最高の名人たちに選ばれているヨコイの酢がどのように造られているのか、今回じっくりと説明を受ける機会に恵まれました。
工場は江東区新木場にあります。江戸前寿司伝統の地東京で90年もの長い間、お酢造り一筋で営業してきました。「ヨコ井の酢」という目立つ看板に見覚えのある方も多いのではないでしょうか。
会議室で横井社長から講義を受けます。その後、2班に分かれて、工場見学に行きました。工場内は撮影禁止ということで、写真がないのが残念ですが、出来立てのお酢を飲んだり、普段見ることができないところまで工場長の丁寧な説明付で案内されました。
お酢造りは、酒精発酵、食酢発酵、熟成・ろ過・殺菌の工程で造られます。酒精発酵では、炊いたご飯に米麹と水を加えます。でんぷんが分解されて糖化もろみができるので、これに酵母を加えて酒にします。食酢発酵では、できた酒と種酢を混ぜ加温して発酵槽に入れ、食酢菌膜を植えます。その後、種酢と菌膜の働きで約2週間でお酢ができます。できあがったお酢を1~2ヶ月熟成させ、ろ過・殺菌するとようやく製品になります。工場見学の内容は非常に興味深く、盛りだくさんなのですが、言葉で説明するのは難しい。写真付の詳しい説明はコチラをご覧下さい。
工場見学の前に、お酢を使った料理教室が開かれました。まめ鯵、イワシ、白菜などのお酢を使った料理、五分搗き米と鰯のおにぎり、手作り餃子などが出されます。手作り餃子は、大人気の「真黒酢(まっくろず)」につけて食べます。この酢はおいしいですね。我が家でも先週、手打ち餃子を作って、「真黒酢」を試してみました。いつもの、醤油+酢+ラー油のタレと、真黒酢の食べ比べ。真黒酢で食べると、餃子の油っぽさが緩和されて、サッパリと食べることができます。油っこい料理にはよく合います。完成度が高いので、何も加えなくてもそのままで使える優れものです。
ヨコ井の真黒酢の特徴は、①酸っぱさをあまり感じない、②マイルドで飲みやすい、③必須アミノ酸、有機酸、ミネラル等有効成分が豊富ということだそうです。特にアミノ酸は従来の酢の6倍も含まれているといいます。その秘密は「固体発酵」という独自の製法にあります。従来の液体発酵に比べると手間はかかりますが、その分熟成度は高くなります。この固体発酵、中国の一部地方に古くから伝わる伝統的な酢の醸造法で、 国内では横井醸造だけが行っているそうです。真黒酢は、水や牛乳で割ってハチミツなどを加えると一段とおいしく飲めるそうです。8月には小さな150mlの「真黒酢」も発売予定です。「これで海外にも持って行ける」と料理の先生。確かに何にでも使えて、味がよくまとまるので、海外に持っていくと重宝しそうです。
工場見学から帰ると、「赤のぶどう酢」がふるまわれました。これは「飲む酢」にピッタリ。酢のキツさがないので、そのままでもスッキリと飲むことができます。工場見学では、階段を上り下りしたので、喉が渇いていました。赤のぶどう酢を飲むと、疲れもとれて爽やかな気分になります。
はじめてのお酢工場の見学会は、とても充実した内容でした。品質管理や衛生管理を徹底した近代的な装置を使う一方、お酢の伝統や発酵の文化をしっかりと守ろうという気概を感じました。こういった企業姿勢が、品質の高い製品を生み出す基本になっているのだと感じました。