この店に来たら、これを食べておかないと。というような、名物料理のある居酒屋もいいものです。新宿の居酒屋、吉本にも名物があります。なぜか長野県だけで食べ続けられてきた郷土食「塩いか」。茹でたイカを塩漬けにした昔からの保存食です。北海道などで作られ、食べるのは不思議と海のない長野県だけ。吉本に来たら、まずは塩いかを注文します。ハーフサイズもあるようですが、僕はいつも普通の大きさ。直径15センチくらいの皿にぎっしりと盛られた塩いか。これだけでもずいぶんと酒が進みます。
まずは皿に並んだ小さな3品のお通し。それから着席と同時に注文した塩いかが運ばれてきます。塩漬けのイカとキュウリ、それからミョウガがよく効いている。これは酒がすすみます。1杯目は、南信州ビール ゴールデンエール。細やかな泡とともに、華やかな香りが立ち上ってきました。
吉本は酒、料理ともに質が高い、見た目にも気を使った隙のない料理。割烹とまではいきませんが、居酒屋にしてはかなり気の利いたものを出します。それに対して、店内は完全に居酒屋モード。わいわいがやがやとみんな楽しく酒を飲んでいます。
今週のおすすめ料理の中から、季節煮物(茸の煮浸し松茸入り)880円を注文。厨房には御主人と若い板前さん。お二人とも丁寧に手早く作業をこなしています。盛り付けは細かく、料理にも手が掛かっています。ただ、手を掛ける部分と掛けない部分があって、そのバランスがいい。その結果、クオリティの高い料理が非常に短時間で出来上がります。このバランスはご主人のセンスでしょう。価格とスピードと味と見た目、一つの答えがここにある気がします。
鮪ぶつ1,100円も追加で注文。ぶつとはいえ、かなり質の高い鮪です。これで1,100円だったら、それほど高いという気もしない。まずまずではないでしょうか。
吉本は日本酒もいいですね。お得なセットが何種類も用意されていました。僕が好きな雄町のセットがあったので、早速注文。雄町米三銘柄セット880円。雄町米を使用した、田村、上喜元、美の川 越の雄町の3種類を飲むことができます。
新宿はいい居酒屋を探すのが難しいエリアです。そんな中、吉本という選択は、かなり手堅いのではないでしょうか。おばちゃんの接客はフレンドリーで話しやすいし、厨房は手早くキッチリとした仕事をこなす。店内は、カウンターで一人、ゆったりと飲んでいる客、テーブル席で和気あいあいな家族、座敷で大騒ぎしているサラリーマンと、全てを許容する懐の深さがあります。吉本は、様々な人々が行きかう新宿という街に、あるべくしてある憩いの場所とも言える居酒屋です。
■店名:酒処吉本
■住所:東京都新宿区西新宿1-13-3西新ビル3階
■電話:03-3348-9658
■営業時間:17:00~23:00(L.O.22:30)
■定休日:日曜・祝日
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