小金井「割烹たけ」海老原料理長
小金井の企画、「江戸東京野菜でまちおこし 秋の黄金丼(こがねどん)フェア」の食事会に参加した。小金井市は7年ほど前から、何か賑わいを生むような地域資源はないか探していたという。最初に見つけたのは「水」だった。「小金井」という地名は、「黄金(こがね)に値する豊富な水が出る」ことに由来する。元来、湧水が豊富な土地なのだ。地元の商店街が六地蔵の敷地内に深井戸を掘り、「黄金の水」のブランディングをはじめた。この水は料理の出汁がよくとれ、お茶などにも適しているという。更に3年ほど前から江戸東京野菜を使った「黄金丼」という企画をはじめた。
江戸東京野菜といえば、江戸川区の小松菜、亀戸の亀戸大根、練馬の練馬大根などがが有名だ。なぜ小金井で江戸東京野菜?と疑問に思ったが、古い文献によると、小金井は江戸市中に野菜を供給する産地として知られていたという。そういう意味では、小金井市と江戸東京野菜とのつながりは深いということだろうか。
「江戸東京野菜でまちおこし 秋の黄金丼(こがねどん)フェア」は11月17日(土)~12月2日(日)まで開催された。この期間中、小金井タウンショップ「黄金や(こがねや)」で黄金丼食事会「東京特産食材を楽しむ昼御膳」が開催された。料理を担当するのは、普段から江戸東京野菜を使った料理を提供する小金井「割烹たけ」の海老原料理長だ。
秋の黄金丼フェアは小金井市内40店が参加した。金町こかぶ、伝統大蔵大根、しんとり菜、東京長かぶ、馬込三寸人参、伝統小松菜、亀戸大根の7種類の江戸東京野菜を使用して、オリジナルの丼を作るという企画だ。
金目鯛の煮おろし(伊豆大根)
東京長かぶ摺り流し
亀戸大根の味噌漬け
食事会では、江戸東京野菜のミニ会席と題して、5品ほどの料理が供された。小金井市の職員の方や海老原料理長の説明もあり、料理の詳細なレシピまで配布された。コースは「黄金の水」からはじまった。さっぱりと癖のない美味しい水だ。
「東京長かぶ摺り流し」は、東京長かぶとタマネギ、馬鈴薯などを摺り流したもの。生クリームとよく合っている。金目鯛の煮おろし(伊豆大根)は、伝統大蔵大根、伝統小松菜、針柚子を使用。大蔵大根は、世田谷区大蔵あたりで作られていた大根で、全体が同じ太さで煮物に最適な大根。今でも世田谷区で生産されている。
伝統小松菜は昔から江戸に伝わる伝統野菜だ。一般に出回っている小松菜は、中国野菜と掛け合わせたものが多い。これは青梗菜の親戚みたいなものだろうか。伝統小松菜は葉色も淡い繊細な食感がする。我が家でも伝統小松菜をよく食べるが、江戸川区の路地ものなんかはほんとにうまい。
黄金の彩り飯
栗の渋皮煮 小豆添え
黄金の彩り飯(潮汁かけ・口さんしょ)は、金町こかぶ、馬入三寸人参、芯とり菜、椎茸、小金井産銀杏、うす焼卵、金町こかぶなどが入った彩り豊かな一品。レシピには潮出汁の引き方なども詳しく載っている。これは家で作ってみたくなる。野菜の美味しさをうまく引き出した料理だった。
亀戸大根の味噌漬けは、大根菜の葉唐辛子風。デザートは、栗の渋皮煮 小豆添え。小金井前原産栗(利平)を使ったものだ。ブランデーの香りと栗がよく合う。小金井は昔から栗林が多く、今でもたくさんの栗がとれる土地なのだそうな。この料理、割烹たけでも年に1回、この時期にしか食べることができない。渋皮をむくのに4時間くらいかかるそうで、とても1年中出せるような料理ではないのだろう。
江戸東京野菜は、わかりやすく言うと、食べやすく改良される前の野菜なので、苦みや渋みが強く食べにくいものもある。今、主流となっている一代限りの種「F1種」は食べやすく、害虫に強く、コストが掛からない。それでも、昔から続いてきた在来種をもっと大切にしようという試みは、小金井市をはじめ様々なところではじまっている。江戸東京野菜を大切にしようという運動は、そういう問題意識を持った人たちの試みの一つなんだろうと思う。
■店名:割烹たけ
■住所:小金井市前原町5-6-16
■電話:042-381-9213
■営業時間:17:00~24:00
■定休日:火曜日
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