午後は「平戸オランダ商館」に向かう。港でバスを降りてガイドさんと歩いて行くことになった。途中、オランダゆかりの史跡もいくつか見ることができる。港のそばにある平戸駅は、なんと電車が通っていない。昔、船で物資が運ばれてきてこの「駅」に集荷したという。日本最西端の駅は松浦鉄道西九州線のたびら平戸口駅ということになっているが、そこからさらに船で西に行ったところにある、平戸駅こそほんとうの日本最西端の駅だ。
通称「オランダ塀」と呼ばれる塀は、1610年代に築造された。玄武岩の板状石を積み重ねその間を漆喰で塗り固めたもの。これがオランダ商館と平戸との境界塀で、面白いことに一部は海産物店の店内に残ったままで営業を続けている。
そのすぐ近くにある「オランダ井戸」は和蘭商館時代から残る数少ない遺構のひとつ。板状玄武岩で西洋のレンガブロック積みの技術を応用して作られている。江戸時代から続くオランダ由来の断片が、今でも所々に残っていて歴史を感じさせる。そしてその代表的な存在、「オランダ商館」に向かった。
オランダ商館は、オランダ東インド会社の東アジアにおける貿易拠点。江戸時代(1609年)に平戸に設置され、比較的自由な交易が許されていた。その後鎖国政策が進展し長崎の出島に移転(1641年)するまでの間、ヨーロッパの様々な物が平戸にもたらされた。
1639年に作られた巨大な石造倉庫を復元し、「平戸オランダ商館」として昨年の9月にオープンした。建物自体が展示物になっていて、当時の様子を髣髴とさせる外観、建物の構造も当時の姿を再現している。外観と構造はオランダ式で、屋根などは日本の技術が活かされている。日本ではじめての洋風建築物だ。外壁は全て石積みで重さが60kgもある石材が2万個も使用されている。1階中央に立ち並ぶ巨大な柱は、大きさ50cm角、樹齢700年の木材を使用している。
平戸オランダ商館の目の前には黒子島(くろこじま)が見える。黒子島は「黒子島原始林」として国の天然記念物に指定され、西海国立公園の特別保護地域にも指定されている平戸瀬戸にある無人島。景色はとても美しいのだが、風が強すぎてのんびり見ている余裕もない。建物の前で集合写真を撮ったあと、あわてて建物の中に逃げ込んだ。
絵画、鎧兜、古地図など興味深い品々が並ぶ。地図をよく見ると北海道が大陸にくっついている。航海に関係ない部分はどうでもよかったのだろうか。絵画や書籍も興味深いものが多い。特に古い本の挿絵には目が釘付けになった。
オランダ塀の続く坂道を登って次の目的地へと向かう。強風にあおられながら坂下を見下ろすと、洋館のわきにちらりと海が見えた。こういう景色こそが平戸らしいのかもしれない。この一瞬にしか出会えなかった印象深い景色。後ろ髪を引かれる思いで次へ急いだ。
■店名:平戸オランダ商館
■住所:長崎県平戸市大久保町2477
■電話:0950-26-0636
■営業時間:8:30~17:30
■定休日:毎年6月第3週火水木
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