山本益博氏の「フランス料理の食べ方」講座 エディション・コウジ シモムラ フランス レストランウィーク2012

フレンチ

評論家 山本益博氏のスピーチ
評論家 山本益博氏のスピーチ
六本木「エディション コウジ・シモムラ」で、「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2012」開催記念のスペシャルイベントが開催された。評論家 山本益博さんによる「フランス料理の食べ方」講座つきのディナーということで、堅苦しいマナーではなく、レストランでの過ごし方やフランス料理を楽しむためのコツなどを食事をしながら教えてもらえる講座だ。一方、フランス レストランウィークもフランス料理を気軽に楽しむためのイベント。全国544店舗のフレンチレストランで、ランチ2,012円、ディナー5,000円という低価格の特別コースを提供する。9/24(月)~10/7(日)の2週間だけの開催だ。ということは、今度の日曜日まで!なので、気になる方はhttp://www.francerestaurantweek.com/restaurant/でレストランを検索して、急いで予約!
◆予約方法:
・一休.comレストランサイト(http://restaurant.ikyu.com/
・直接レストランへ電話
※予約の際に、「フランスレストランウィークのメニュー希望」であることを、必ずお店にお伝えください。


マスヒロさんとは、先日フランス大使館でお会いして、少しお話をさせて頂いた。最近はずっとブログを書かれていて、最新情報はそちらで見ることができる(下にリンクあり)。たぶん日本で唯一食の評論家&ライターとして食べているプロ中のプロの方がブログを書いているというのは、僕としては驚きだった。ブログを拝見すると、これまでよりもずっと身近な存在に感じるから不思議なものだ。
エディション・コウジ・シモムラでも、カメラを持ってきて今日食べた料理の写真とか、いろいろと見せてくれた。とても優しくて話しやすい方だ。そんなわけで、山本益博氏とお呼びすべきところだが、この記事では親しみを込めてマスヒロさんと書かせてもらうことにした。
アミューズ・ブーシュ
アミューズ・ブーシュ
海水で軽く火を通した牡蠣の冷製 海水と柑橘のジュレ 岩海苔風味
海水で軽く火を通した牡蠣の冷製 海水と柑橘のジュレ 岩海苔風味
フォアグラのソテー セップ茸とアーティーチョークのヴルーテ
フォアグラのソテー セップ茸とアーティーチョークのヴルーテ
マスヒロさんによる下村シェフの紹介は、ご自身のフランスでの食べ歩きのエピソードを交えて語られた。下村さんの修行先のラ・コートドールのベルナール ロワゾ―氏との話など、下村さんが修行される前後の時期、まだミシュランで星を得ていない時期の出来事など興味深い話ばかりだった。
下村シェフは資料を手に各テーブルを回って、いろいろと話をしていた。一般には募集していない料理教室の話や、この日の料理の説明など。ちなみに料理教室は、エディションに食べに来た人が、一度だけ参加できるという特別なもの。値段も安いし、僕も一度行ってみたいと思う。
下村シェフ
マスヒロさん
マスヒロさんはみんなと同じように、席について食事をしていた。ちょうど僕の横のテーブルで、同席した人たちに、自分の食べ方や、食事するときの注意事項など随時説明しているようだ。すぐ横なので、僕にも説明が時々聞こえてきた。
ある料理を食べた後には、「残ったソースに白ワインを少し垂らして残りを綺麗に食べる」というようなことを説明していた。そうすると、その皿が厨房に戻ったときに、同じ料理を下げたのに、1つだけ違う香りがする皿が混じっている。「必ず戻された皿はチェックしていますよ。その時に私の皿がどれなのか、すぐに分かる。このようにして、厨房にメッセージを伝えることもできます」。
その時点で白ワインが3種類並んでいたわけで、どのワインをどのくらい入れればソースがよりおいしくなるのかは、難しいところだ。当然ダメにしてしまう可能性もあるので、自信のない人は真似しない方がいいかもしれない。マスヒロさんの料理を楽しむ工夫と、何とかして厨房を喜ばせたい、「おいしかった」という気持ちを伝えたいという思いのなせる技だと思う。
マスヒロさんのスピーチの中で、ガニエールに行ったときの話も登場した。その日の料理があまりに美味しかったので、皿にチョコレートで「ブラボー」と書いたら、「ガニエールからです」と銀盆が運ばれてきた。そこには「メルシー」と書かれた皿が入っていたという。このお2人ならではのエピソードだ。
ガニエールさんがすごいのは、自分のレストランに行くと必ず厨房にいること(たいていのオーナーは客席にいる)。しかも下げられた皿までチェックしているとは。でもマスヒロさんみたいなお客さんが時々来ることを考えると、なかなか気が抜けないものだ。
カダイフを纏った的鯛の軽やかなフリット ブロッコリーのクーリとレモンのコンフィチュール
カダイフを纏った的鯛の軽やかなフリット ブロッコリーのクーリとレモンのコンフィチュール
イベリコ豚”ベジョータ” プルマのロースト 根野菜添え
イベリコ豚”ベジョータ” プルマのロースト 根野菜添え
白いデザート
白いデザート(ライチ、ココナッツ、パイナップル)
エディションは、ミシュランで二ツ星の名店。修行先のラ・コートドールのベルナール ロワゾ―氏の影響を受け、クリームやバターを極力使わない料理を実践している。ベルナール ロワゾ―氏はバターもクリームも使わない自身の料理を「水の料理」と呼んだ。ラ・コート・ドールが三ツ星になってから2年ほど経った頃、最も勢いのあった時代に下村シェフが在籍していた。
マスヒロさんの挨拶でも紹介された「海水で軽く火を通した牡蠣の冷製 海水と柑橘のジュレ 岩海苔風味」は、牡蠣を海水で煮るという独特の調理法。
スコットランドに行ったとき、牡蠣にボウモアをかけて食べたことがある。ボウモアは水面下にある貯蔵室の影響で、磯の香りを含んだウイスキーになる。だから牡蠣にボウモアはぴったりと合う。あの牡蠣は生涯忘れられない味だった。
牡蠣は生で食べても焼いて食べても、海の香りがする「スープ」が楽しみな食材だ。この料理も海水や岩海苔など、磯の香りのするものを使うので、牡蠣と相性がいい。下には牡蠣のムースが敷かれている。柑橘の酸味がいいアクセントとなっていた。これぞ水の料理と呼ぶにふさわしい。爽やかな料理だった。
カカオウォーター
カカオのヴァリエーション
カカオのヴァリエーション(ガナッシュ、ソルベ、カカオウォーター)
「カダイフを纏った的鯛の軽やかなフリット」は、カダイフが油を吸わないので、ヘルシーにカラッと揚がっている。こういう配慮はエディションならではだ。
下村さんの資料にもこの料理についてメモが記されていた。「揚げ物は衣の中の水分が放出され油を吸収する。カダイフは乾燥しているので揚げても油をあまり吸収せず、油分の含有量は少ない」というようなことを、もっと細かく、油分の%まで詳細に書かれていた。やっぱり料理人は科学者のような目を持っていないとできないんだな。この資料を見て改めてそう感じた。
「スペイン産イベリコベジョータ プルマ」もよかった。プルマというのは、スペイン語で羽の意味。首の付け根のところに羽のように、左右についている。一頭でわずか200gほどしか取れない非常に希少な部位だ。しかもイベリコのプルマなので、入手すること自体が大変なんじゃないかと思う。その肉がとても柔らかく仕上がっていて、食べ応えがあった。
サンパウにもイベリコ豚のプルーマという名物メニューがあるが、柔らかい肉にコッテリとした甘いソースがかかっている。あれはあれで美味しいのだが、エディションのイベリコのプルマはもっとさっぱりとして、ヘルシーに仕上がっている。このへんはレストランの考え方の違いなのだと思う。この料理は、根野菜の美味しさが際立っていた。イベリコよりも野菜の方に僕は感動したほどだ。味わいはけっこう濃厚だったが、クリームやバターは使っていない。やや強めの塩気でキリッと味の輪郭を出しているのが印象的だった。
クリームチーズとレモンのムース ルバーブのコンポートとクランブル
クリームチーズとレモンのムース ルバーブのコンポートとクランブル
黒オリーブのフィナンシェ
黒オリーブのフィナンシェ
この日一番美味しかったのは、「白いデザート」だった。他の料理ももちろん素晴らしく美味しいものばかりだったが、この皿の出来があまりもよかったので、一番印象に残ったのかもしれない。ライチ、ココナッツ、バイナップルを使ったという真っ白なデザート。スプーンに一口取るたびに、香り、味、食感が微妙に変化していく。味わいも非常に繊細で、上品な美味しさがある。ここ数年食べたフレンチのデザートの中で傑出した一皿だった。真っ白で美しいデザートだったが、まともな写真が取れず、その美しさが伝わらないのは残念。ぜひお店で実物を味わってください。
会場は素晴らしい雰囲気だった。フレンチを囲んで、これほど一体感のある食事ができるとは。はじめての経験だった。
マスヒロ食時記にマスヒロさんが書かれていた、「フランス人が食卓で大切にする『コンヴィヴィアリテ』」とはこういうものなのか。こんなに勉強になった食事会ははじめてだ。
山本益博氏と下村シェフ
「フランス料理の食べ方」講座といっても、気軽に食事をしながら、時々、マスヒロさんがマイクを持って「こういう食べ方もあるよ」とか教えてくれる。フレンチは高価で高級なイメージが強い。確かにフランス料理店の上質な料理やサービスは、記念日などにふさわしいものだ。でも常にそういう場所というわけではなく、もっと気楽に普段使いできるレストランはあるし、高級店でも、気軽な使い方はできるものだ。ランチはたいてい安く設定されているので、まずはお昼に行ってみるのもいいかもしれない。
そういう意味では、今週はものすごいチャンス。先週と今週の2週間だけ、フランス レストランウィークが開催されていて、破格の安値で高級フレンチを食すことができる。
フランス レストランウィークは、普段フレンチレストランに足が向かない人にも、気軽に楽しんでもらえることを目的にしている。ランチ2,012円、ディナー5,000円という低価格で設定されているのもそのためだ。まだ席の空いている店もあると思うので、冒頭に書いた方法で予約して、ぜひこの機会に気軽なフレンチを体感してみてください。

■店名:エディション・コウジ シモムラ
■住所:東京都港区六本木3-1-1 六本木ティーキューブ1F
■電話:03-5549-4562
■営業時間:ランチ12:00~13:30(L.O)、ディナー 18:00~21:30(L.O)
■定休日:不定休

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