京都 料亭 なかむら

和食 寿司

京都 料亭 なかむら1
福岡に帰省する時はどこかに寄り道をして帰ることにしている。長野、名古屋、奈良、大阪、神戸、姫路。今までもいろんなところに寄り道をしているが、一番回数が多いのは圧倒的に京都だ。正直言うと、京都という場所にはそれほど好きでない部分もある。結構めんどくさかったりもする。でも年に一度は京都で和食を食べたい。何があったとしても、やはりせっせと京都に通うことになってしまう。


京都 料亭 なかむら2
京都 料亭 なかむら3
京都 料亭 なかむら4
京都 料亭 なかむら5
京都 料亭 なかむら6
「なかむら」は江戸時代後期、若狭ものの魚介を京都に運んだ担ぎ商いが初代。三代目が茶懐石の出張料理をはじめ、四代目は俵屋、柊家、炭屋などに仕出し料理を納めていたという。現在は六代目が「一子相伝」の味を受け継いでいる。
店に入ると玄関に和服を着た女性が控えていた。どうやら担当が決まっているらしく、今日はこの方が僕らのお世話をしてくれるらしい。他の店員さんは一度も顔を見せなかったからたぶんそういうことなのだろう。とても丁寧な接客をする感じのいい人だ。
通された個室には中央に朱塗りの大きなテーブルがあり、そのまわりに屏風、絵画、掛け軸、壺などいろいろと立派なものが揃えられている。個室はいくつもあるが、お客さん同士が顔を合わせないように配慮されている。ゆったりとした余裕のあるもてなしに心が休まる思いがした。
お茶とおしぼりの後、一品目が運ばれてきた。豆乳豆腐と出汁のジュレ。上に乗った山芋がしゃきしゃきとして爽やかだ。底にたまった豆乳とゆばが濃厚で、たっぷりと入ったウニとからんで大変うまい。アナゴもうまい。柑橘系の香りがする美しい一品だった。
なかむらの有名な逸品、「白味噌雑煮」が運ばれて来た。臭みが出るので出汁は使わないとのことで、白味噌を水だけで練り上げている。一子相伝の製法だ。餅は毎日ついて、両面を香ばしく焼いている。辛子がきいていてなんともうまい。これも特殊な辛子なんだそうだ。
京都 料亭 なかむら7
京都 料亭 なかむら8
京都 料亭 なかむら9
京都 料亭 なかむら10
京都 料亭 なかむら12
お造りはぐじと鱧の焼き霜、天然の車海老。マグロとか鯛でないのがいい。やっぱり京都なのだから京都らしい魚を使うべきだ。すだちをきかせた加減の醤油はぐじと鱧に使う。鱧の焼いた香りがなんともいい。
八寸は、子持ち鮎、鮎の骨せんべい、貝柱とタコ、焼き栗、エビのきんつば、焼き鯖すし、鱧の子とイカ。僕は八寸が大好きだ。その店の個性とか季節だとかが見えやすい。箸休めでもあるし、このへんで酒を頼んだりとか、飲兵衛のスイッチみたいなものでもあると思う。
湯葉汁の中に入った鱧は道明寺粉の揚げ物、椎茸(どんこ)、冬瓜。おいしくて温まる一品だ。このレベルで次々と料理が出てくると、この後どんなものが登場するのか、かなり期待してしまう。実際、期待感でゾクゾクするほどで、「この店に来てよかった」としみじみと感じる。
エッジの効いたピカピカの料理ではなく、家庭料理の延長のようなほんわかしたところがいい。それでいてどれも計測されたように整った味なのは不思議だ。見事な出来栄えとしか言いようがない。
続いて出て来たのは、鱧の落とし、山口の松茸。器も色使いが美しい。松茸は酢の物でもうまいというのを実感させてくれる。いい香りだ。上にのった千切りも松茸だった。
ぐじの酒蒸しは、まずは皮と骨を残して身だけを食べる。その後昆布出汁をかけて、今度は汁だけを飲む。この汁のうまいこと。この日の料理の中でも一番かもしれない。さすがはなかむらの名物料理。今年No.1の一皿だと思う。なんといっても、この汁だ。とにかく汁がうまい。
京都の料亭は綺麗で上品な料理を出す店が多いが、なかむらのぐじの酒蒸しは、とにかくうまければ見た目や形式にはこだわらないという姿勢がよく表れている。そして実際に唸るほどにうまかった。
シメは、からすみのごはん。水菓子は、ザクロと白桃とピオーネ、アイスとジュレだった。
京都 料亭 なかむら13
京都 料亭 なかむら14
京都 料亭 なかむら15
なかむらの印象はとてもよかった。サービスもいいし、料理も落ち着きがある。他の京都の料亭や割烹と違ってギラギラしたところがない。気取らずに、素直においしい食べ方で食べさせてくれるのも好感が持てた。有名な名物料理だけに頼ることなく、新しい感覚も取り入れようとしている。たぶん来るたびに新たな発見があるはずだ。近いうちにまた来たいと思う。
今回は23,000円の一番高いコースにしたが、結構量は多かった。もう少し量を減らしても十分楽しめるので、次回は15,000円のお昼のコースにしようと思う。たぶんそれでも十分すぎるほどに楽しめるはずだ。落ち着いて気持ちよく食事ができるというのは、とても大切なことなんだなと思う。特にこのクラスの店では、意外とその辺がうまくいかないことが多い。その点、なかむらのホスピタリティは、なかなか得難い特色になっていると思う。
ちなみに最後の屏風は某有名な先生が来店時に描いてくれたもの。その日は雨が降っていたが、その先生は何故か「雨」という字を嫌って使わなかったそうで、「雨」ではなく「花」にした。『花しぐれ京都の夜を奈かむらに』。歴史のある店はこうして美術品が集まってくる。誰かがくれた絵とか、描いてくれた屏風とか。店も古いから器も古いというだけで、なにもお金をかけて集めているだけではない。こういうのは古い店のいいところだと思う。
■店名:なかむら
■住所:京都市中京区富小路御池下ル
■電話:075-221-5511

タイトルとURLをコピーしました