境港から瀬戸内海側に移動して電車に揺られて西条まで来た。西条といっても四国の西条ではなく、広島の手前、東広島の西条だ。瀬戸内海を挟んでちょうど反対側なので何か関係があるのかもしれないけど。
西条駅の近くには7つの酒造がある。以前は8つだったのだが、最近、賀茂輝酒造が廃業して7つになったそうだ。今あるのは、賀茂鶴酒造、福美人酒造、白牡丹酒造、西條鶴醸造、亀齢酒造、賀茂泉酒造、山陽鶴酒造。大正の時代には「酒都西条」と呼ばれるほどの一大銘醸地だったそうな。
オバマ大統領が安倍首相とすきやばし次郎で会食した際に出された酒は、西条・賀茂鶴酒造の「大吟醸・特製ゴールド賀茂鶴」だった。これはかなり旨い酒ではあるけれど、寿司の味を邪魔しない水のような酒だ。
その賀茂鶴酒造発祥の「美酒鍋」という料理があるのをご存じだろうか。美酒鍋は、終戦直後の食料がない時代に、賀茂鶴酒造の専務が出した賄い料理。当時安かった鶏の砂肝や白菜、葱を入れて日本酒と塩と胡椒だけで味付けをした。蔵人思いの専務が考案した賄い料理だったのだろう。今では東広島市の名物料理になっている。
賀茂鶴酒造直営の「佛蘭西屋」は、日本酒の仕込み水を使う和洋食レストラン。1階が洋食で2階が和食。2階には美酒鍋もあるし、賀茂鶴の利き酒も楽しむことができる。
元祖美酒鍋コースは、1人前4,800円。美酒鍋単品は1,900円。コースは、先付け、前菜、御造り、美酒鍋、本日の一品、酢の物、御飯、甘味という内容。
豚肉、鶏肉、砂肝、にんにく、塩、胡椒を加えて少し炒める。この時に酒を加える。この酒は賀茂鶴の上等酒だ。「売るほどある」とはこのことなんだろうなあ。ドボドボと結構な量入れる。惜しげもない使いっぷりだ。
その後、他の材料を入れて水気がなくなるまで炒め煮をする。酒で煮る料理ではないので、焦げ付かない程度に酒を入れるのがコツだそうだ。野菜炒めのようにならないように、酒の香りを効かせる。生卵をつけて食べるのだが、僕はそのまま食べた方が好みだった。
美酒鍋は意外と具だくさんで、白菜、人参、白葱、ピーマン、玉ねぎ、厚揚げ、こんにゃく、春菊、椎茸、鶏もも肉、鶏砂肝、豚肉、にんにくなどが入っていた。
御造り三種盛り、地蛸の柔らか煮、酒粕と梅酒梅の春巻き、野菜の天婦羅なども注文。酒蔵直営の店なので日本酒も飲んでおかないと。「佛蘭西屋」は、シェリー酒の樽で2年間寝かせた熟成酒。仏蘭西屋だけで飲める限定酒だ。蔵でしか販売していない「蔵出し原酒」などもあった。
佛蘭西屋の外観は京町屋をモチーフにしているそうだ。テーブルやイスなどの内装は、木の温かみを感じる木製。壁一面にズラリと酒器が並ぶ様はまさに圧巻だ。大正時代っぽいポスターもあり、当時の雰囲気を表現している。
鍋に入れる酒
御造り三種盛り
地蛸の柔らか煮
酒粕と梅酒梅の春巻き
野菜の天婦羅
■店名:仏蘭西屋
■住所:広島県東広島市西条本町9-11
■電話:082-422-8008