若者の街としてのイメージが強い渋谷ですが、時代に取り残されたように古い居酒屋が残る場所もあります。僕が学生時代に通ったのは、少し外れた場所にある居酒屋でした。例えば、渋谷マークシティに沿った通り。焼肉、焼き鳥、うなぎなどの店が並び、店から大量の煙が吐き出されています。この辺りで好きなのは、魚介の爆盛りで有名な店「魚がし福ちゃん」。そこから首都高を渡って、セルリアンタワーの裏手に桜丘町という街があります。この辺りにも古い焼肉屋や居酒屋が残っています。中でも好きなのは、学生時代から通っている焼き鳥屋「鳥金」。宮崎地鶏の炭火焼きをリーズナブルな値段で提供する焼き鳥屋です。
今にも傾きそうな小さな建物に赤提灯。店内は焼き鳥を焼く煙が充満し、店の外にまで漏れて来そうなほど。会社帰りのサラリーマンで賑わう焼き鳥屋の風情です。ところが中に入ると、全く違う客層であることが分かります。サラリーマンよりも、クリエイティブな仕事をしている若い人たちが多く、女性が2~3人で飲みに来ていたりします。正面のカウンターと、奥の空間にも小さなカウンターが壁沿いに一周しています。壁にへばり付いたティッシュ箱、カウンターの飛び出した先に、2人で向き合って座れる席があるなど、簡素な中にも工夫がうかがえます。
はじめて訪問した時の衝撃は今でも忘れません。純粋に味だけでファンになるというのも、当時はあまりないことでした。ただ、昔おいしいと思った店も、今食べに行くとがっかりする事が多いものです。当時と比べて舌が肥えているし、経験も積んでいる。特に居酒屋では、昔と同じように楽しむのは難しくなっています。居酒屋は安いのが前提になります。それでも清潔で食材の質がよく、調理が適切、そんな店はなかなかないものです。
まずは地鶏の刺し身(胸肉)630円を注文。これを食べた瞬間、やはりここは本物だと思いました。この値段でこれだけの刺し身が出せるのだから、すごい店です。地鶏もも身炭火焼き中皿1,155円と、めかぶ315円を注文。地鶏もも身の炭火焼きというメニューも、今では珍しくありませんが、未だにここが一番だと思います。小皿(1人前~2人前)630円、中皿(2人前~3人前)1,155円、大皿(3人前~4人前)1,680円とありますが、中皿を頼めば2人で十分の量があります。
地鶏串焼き(2本525円)の地鶏レバー。これはレバーとハツがあります。串おまかせは、5本735円、10本1,470円、15本2,205円。このくらい食べれば焼き物は大体一通り。
酒はいろいろとありますが、日本酒は熊本の瑞鷹(ずいよう)一マス525円、千葉勝浦の腰古井(こしごい)一マス630円、樽酒一マス525円の3種類。このへんで一休みして、もろキュー315円で一杯やります。サイドメニューの質の高さも鳥金の魅力です。
シメに冷や汁630円を注文。冷や汁は内容や呼称が微妙に異なるものの、類似した料理が日本各地に存在します。その中でも最も有名なのは、宮崎県の冷や汁でしょう。鳥金も宮崎地鶏を扱う店だけに、冷や汁も置いてあります。最後にひんやりクールダウンできる冷や汁はシメに最高。シメといえば温かいものが主流ですが、特に夏の暑い日はこの冷や汁が食べたくなります。
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鳥金 渋谷
■店名:炭焼処 鳥金
■住所:東京都渋谷区桜丘町16-10
■電話:03-3770-8679
■営業時間:17:00~23:00
■定休日:日曜・祝日
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