ミシュランで一つ星を獲得したバードコート。ようやく足立区が調査地域に加わったということでしょうか、今回はじめてミシュランに掲載されました。店主の野島さんに電話すると、とても嬉しそうにいろいろと教えてくれました(後述)。今回バードコートで驚いたのは、コース主体に変えているところ。今までも僕は毎回おまかせでお願いしていましたが、今回はかなり計算されたコースが組まれていました。味付けなど細かい部分もかなりの変更があるようです。名店バードランドで修行をして、これ以上ないレベルの焼き鳥を提供しているバードコート。この店ですら、まだまだ上を目指して改良を重ねているということが新鮮な驚きでした。
席に座ってすぐ出されたのは、温泉卵。温かく、ほのかに柚子の香りがします。その後すぐに前菜。軍鶏の皮の二杯酢、川越のざる豆腐、レバーパテ。僕があっけに取られていると、「いいでしょ?」と野島さん。明らかにやり方を変えています。ミシュランを意識しているわけではないと思いますが、星を取るにはコースにするのが近道でしょう。これは際どい位置にいる全ての店に有効な対策だと思います。レバーパテは好きな人は別に頼んだ方がいいけど、少しだけ食べたい人には、このくらいの量が適量。なるべく全員に食べて欲しいという配慮ではないでしょうか。
ササミは炭の香りがほんのりと香る素晴らしい仕上がり。レバはブラックペバーの風味がいいですね。塩の効いた砂肝も相変わらずうまい。でもここで気付くのは、味付けの変化です。バードコートの変化は、コース仕立てにしただけではなかった!実は焼いているところを見てもその変化は確実に分かるのですが、どのくらいの客がこの変化に気付いているでしょうか。
お口直しに、かぶの漬物。たった焼き鳥3本で、もう口直しです。繊細なササミを最初に持ってきて、味の濃いレバと砂肝。ここで強制的にリセットして、次の鳥皮に備えます。かなりよく考えられた構成ではないでしょうか。お店が何を押したいか、どう食べて欲しいかが明確に伝わってきます。
サッパリとしたところで、鳥皮です。山椒の風味がいいですねえ。ここまで食べて感じるのは、焼き方、味付け、香りなどよくコントロールされているということ。繊細な計算が見て取れます。次のキャベツ焼きも、鳥皮の脂っこさを取る目的もあるようです。これはトリュフソルトで味付けされています。塩自体も旨いのですが、キャベツの甘みをうまく引き出しています。ぎんなんは苦味がいいですね。中盤は野菜で終了。おそらくこの後が終盤ということでいいのではないでしょうか。
いよいよ名物のつくね。奥久慈軍鶏の卵は相変わらず濃厚な味わいです。もちろんパンを頼むこともできます。奥様が様子を見に来て、「卵まだあるのね。パン食べるでしょ?」と言って、卵がなくなるまでパンを持ってきてくれました。
焼きトマトは青臭さがいいですねえ。オリーブオイルにもよく合います。ぎんなんやキャベツなどと同様、野菜類にもかなりこだっているように思います。最後はねぎまです。この出し方を考えても、ねぎまに対する特別な思いは伝わってきます。口直しのベビーリーフまでで、おまかせは終了です。「焼き物はここまでだけど、あとどうする?ぼんぼちとかもあるよ」というので、追加でいくつか頼むことにしました。バードコートといえば、シメのいくつかは定番として押さえておきたいところです。それは次回登場します。
ミシュランガイドの出版記念パーティーの前日、ミシュランガイド総責任者ジャン=リュック・ナレさんがバードコートに食事に来たそうです。その時、野島さんはナレさんのことを知らなかったそうですが、翌日、パーティーで壇上に上がったナレさんを見てビックリ。前日の一緒に来た人たちは知り合いだったようですが、誰の悪戯か、ナレさんのことは知らされなかったようです。
ミシュランガイドに掲載された焼き鳥店は、全部で7店。今のところ全て一つ星の評価になっています。これで一通り出揃ったと考えると、今後この中から二つ星が出てくるのでしょう。天ぷらも少しずつ星を増やしていって、今回はじめて三つ星が誕生しました。焼き鳥に関しても、同じ一つ星といっても、明らかにレベル差があるので、二つ星誕生は間違いのないところだと思います。更に更に上を目指そうとするバードコート。たぶん二つ星候補の筆頭はこの店ではないかと、密かに期待しています。
【以前の記事】
バードコート 北千住 3
バードコート 北千住 2
バードコート 北千住 1
■店名:バードコート
■住所:東京都足立区千住3-68
■電話:03-3881-8818
■営業時間:17:30~23:00
■定休日:月曜日
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