年初に考えたことのひとつとして、今年はビストロに注目しようというのがあった。かしこまったフレンチではなく、気軽にフォークとナイフで食事する感覚。スコットランドに行ったとき、現地の人たちから受けたこの感覚は新鮮な驚きだった。あの小気味のいい食事は、日本では味わえないものだろうか。全く同じでなくとも、ひょっとするとビストロやブラッスリーに行けば似たような感覚を得られるかもしれない。立ち飲みが流行ったり、銘柄居酒屋が流行ったり。居酒屋も様々な業態が流行した。そろそろビストロブームも本格的に来てくれないか、そんな期待も込めた年初の抱負だったのだが、それほどお店を回れないままもう11月になってしまった。
ブラッスリーとは、元々ビール醸造所の意味で、そこからビールなどを飲ませる居酒屋の意味にもなった。ビストロとブラッスリーとは、日本ではあまり区別なく使われている。というかフランスでも境界はあいまいらしい。どちらもフランス語では居酒屋、小さなレストランというくらいの意味になる。
神楽坂にあるブラッスリー グーは、以前から気になっていた。昼も夜も人気があり、常に満席になっているという。岡部敬史さん、イラストレーターの田中小百合さん、トマ子さんと4人で訪問した。田中小百合さんについては、トマ子さんのインタビューに詳しい。リンク先に作品が出ているが味のあるイラストをたくさん描いている。岡部さんと田中さんは会社がすごく近いそうで、業種が近いこともあり意気投合した様子。たまたまではあるが、こういう繋がりができるのは見ていて楽しいものだ。
ディナーコースは、前菜、主菜、デザートの3品をメニューから選ぶ。これで2,980円という低値段。正直、これだけの質でこの安さは驚きだ。ただ、高田馬場のラミティエなどと比べるとインパクトに欠けるところはある。あちらはより明確なコンセプトが伝わってくるし、店は小ぢんまりとしているが慌ただしさがない。ブラッスリーグーは小さい店ながらも席数は多く、接客がバタバタとしていた。いっぱいにお客さんを入れているので、店員が見きれていないように感じた。ブラッスリーだからしょうがないと言われればそうかもしれないが、ビストロやブラッスリーの難しさはこういうところにある。レストランではないので、客も我慢するというか理解しておかなければいけない部分はある。ブラッスリーを日本語訳すれば食堂とか大衆居酒屋になるのだが、実態はそうではない。少なくとも小さなレストラン並みのサービスは必要だと思う。2,980円が安いと思うのはこういう認識に立ったうえでの話。決して安居酒屋でいいということではない。
写真は二人分の料理を並べてみた。前菜に鴨のリエットと、赤ピーマンのムース アボカド添え。主菜に、鴨ムネ肉のロースト グリーンペッパーソースと、牛頬肉の赤ワイン煮。デザートに、洋梨のタルト、モンブラン。この店は肉料理が得意のようだ。ボリュームはやや物足りないがしっかりとした調理と質の高さは感じる。肉をやわらかく煮て甘めのソースで食べさせる。好まれる味付けだと思う。
ワインもかなり安い。僕らは2006年のコート・デュ・ローヌ/ギガル3,990円にした。ローヌ地区で最も有名な生産者ギガル。コスパの高いものが多く、手頃なワインでもかなり高い評価を受けている。ブラッスリー グーでは、ワインは5,000円台のものが多く、ただ安いだけでなくコスパのいいものを選んでいるように感じた。
■店名:ブラッスリー グー
■住所:東京都新宿区矢来町82
■電話:03-3268-7157
■営業時間:11:30~14:30、18:00~21:00
■定休日:日曜日
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