按針の館は、オランダ艦隊の航海長として来日したイギリス人ウィリアム・アダムスが住んでいた家。日本名の三浦按針(みうら あんじん)を取って按針の館と名づけている。現在は、室町時代(1502年)創業の老舗、蔦屋茶寮の店舗として使われている。蔦屋茶寮は平戸銘菓「カスドース」でも有名な菓子店。この建物の奥の座敷を借りて懇親会をすることになった。料理は平戸の「磯かつ」の仕出し料理。平戸の食材を使った特別料理をお願いしているらしい。
ひらめの刺し身としゃぶしゃぶが運ばれてきた。やはり平戸といえばひらめ。刺身、しゃぶしゃぶ、炭火焼きとこの日は3尾もひらめを食べることができる。
平戸は天然ひらめの水揚げ量が日本有数。それだけでなく、座布団くらいの大きさのひらめもとれるらしい。その名も「ザブトン」と呼ばれる巨大ひらめで、一般には見ることのできない7kg級の大物だという。そんなデカイひらめ、大味でおいしくないのでは?と思ったが、平戸の漁師さんによると「ひらめは大きければ大きいほどうまい」らしい。今回出されたひらめも普通に考えればかなりデカいのだが、平戸基準では小ぶりになるのだろうか。
長崎県では各地でひらめの稚魚を放流しているが、その多くは大きくなると平戸に集まるという。詳しいことは分からないが、その理由はどうやら平戸の水にあるらしい。
旬の野菜五点盛り(ミニトマト、カブ、タケノコ、シイタケ、スナップエンドウ)。「WEST FARM」の西さんが育てた野菜が運ばれてきた。WEST FARMは長崎県から環境に優しい農業「エコファーマー」の認定を受けている。WEST FARMのミニトマトは一味違う。まるでフルーツのように甘味が凝縮しているのが特徴。どうすればこんなにおいしくなるんだろうか。品種や栽培方法をいろいろと工夫した結果らしいが、普通のミニトマトとは明らかに違う。
鮑のクリームパスタは贅沢に大ぶりの鮑がごろごろと入っている。クリームはアワビの肝であえている。そういえば平戸は天然鮑の産地でもある。他にも伊勢海老やら紫うにやら高級食材も結構とれる。
メニューを見て、御味噌汁と書いていたので油断していたら、中身はアンコウ、あん肝、カキ、ヒオウギガイと豪華なものだった。ちなみにヒオウギガイは高級な貝で、貝殻の色は一つ一つ違う。オレンジ色っぽいものから紫色のものまであって、どれも微妙に色が違っていた。平戸のうまいものが詰まった味噌汁。これは濃厚な1杯だった。
店の外で炭焼きを焼きはじめた。最初はひらめ。普段ひらめを焼いて食べることはないが、やはり焼いてもうまい。かなり大きなひらめだと思って聞いてみたら、「こんなの全然大きい方じゃない」と地元の人は平然と言う。これで小ぶりとはザブトンはどれだけ大きいんだろうか。
平戸のお隣松浦市のマグロ、平戸ポークのバラ肉、平戸牛のロースも次々と焼かれていく。魚介だけではなく、平戸牛や平戸ポークなど食材は豊富。地方のツアーは本当に楽しい。なんといっても旅行の醍醐味は地方食。平戸のように食材の宝庫のような土地の場合は特にそうだ。
平戸ではいい酒蔵も見つけた。今回のツアーに含まれていた福田酒造という蔵だ。福田酒造の「かぴたん」という焼酎の限定品が用意されていた。なんと30年貯蔵だという。これは今年500本の限定出荷。うますぎて、ぐびぐび飲んでしまった。明日は福田酒造で日本酒も飲める。焼酎がこれだけうまいと日本酒はどれほどだろうと余計に期待してしまう。
デザートは蔦屋茶寮の銘菓「カスドース」。なんとその場で作ってくれるという。通常は別のところで作っているので、按針の館で作ることはない。今回は特別に手作りのカスドースを味わうことができた。その場で食べる出来たてはやはりおいしかった。
一口大に切ったカステラを卵黄にくぐらせて、熱した糖蜜に浮かべる。糖蜜をきったあと砂糖をまぶして完成。 カスドースはポルトガルから伝わった南蛮菓子のひとつ。航海中に水分が飛んだカステラを卵黄に漬し、砂糖で甘味を補強した。当時貴重だった卵と砂糖を使った高級菓子だ。
平戸市長も駆けつけてくれて、楽しい酒宴になった。平戸の人たちの暖かさに触れ、平戸の食材の底力のようなものも感じることができた。
■店名:按針の館
■住所:長崎県平戸市木引田町431
■電話:0950-23-8000
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