東大前 呑喜 閉店

おでん 鍋 すき焼

東大前のおでん屋さん「呑喜」が閉店しました。僕は西片、本郷時代合わせても数年しか呑喜に通っていませんが、それでも僕にとってはとても存在の大きな店でした。呑喜は明治20年創業、130年にもなる老舗です。ご主人は4代目で、跡を継ぐ人はいませんでした。呑喜でお酒を飲んだり、おでんを食べたり、ご主人を見たりしていると、何故この店がこんなにも長い間続いたのか、何故たくさんのいいお客さんに恵まれているのか、そういうことが分かるような気がしました。実際、酒場として大切なことの多くをこの店から教わりました。
呑喜のご主人は僕を気に入ってくれていたようで、最後の客になるといつもいろいろな話をしてくれました。僕が居酒屋の本を書くときに、呑喜も載せたいと相談した時、お二人供とても喜んでくれたのは今でも印象に残っています。本当は内心ドキドキしてこの話を切り出したのでした。頑固なご主人のことだから、たぶん断られるんだろうなあ。こんなことでギクシャクするのは嫌だなあと思いつつ、勇気を出してお願いしてよかったと思います。
先週、僕のブログを見た方からメールをいただきました。お父様の代から半世紀も呑喜との付き合いがあるとのことです。僕のようにほんの数年の付き合いではありません。二人で長いメールをやり取りしながら、お互いに現実を受け入れようとしているようでもありました。
次の日、仕事帰りに呑喜に行くことにしました。看板もそのうち下ろされてしまうだろうし、張り紙も直に見ておきたかったからです。老舗はいつ閉店してもおかしくないものです。ご主人が高齢で跡取りがいない店は特にそうです。これまでも失いたくなかった店がいくつも閉店しました。でもそれを知った次の日に店まで駆けつけたのは今回が初めてです。長年呑喜に通われていた方の多くも同じような気持ちではないでしょうか。


東大前 呑喜 閉店
東大前 呑喜 閉店

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