酒の肴盛り合わせ
編集者の岡部敬史さんと時々お酒を飲みに行く。岡部さんが提案する店は、僕にとってかなり刺激になる店が多い。忘れていたことを思い出させてくれたり、逆に新しい視点に目覚めることもある。だから一緒に飲みに行くのはいつも楽しい経験だ。でもなぜか昨年はその機会がなく、もう年末になろうとしていた。久々にお誘いをして、提案してもらったのが神楽坂「ふしきの」。初訪問だったのだが、その後、なんとミシュランで一つ星を獲得した。岡部さんと行った店がミシュランで星を取るのはこれで3度目になる。
お通し
ワタリガニの酢の物
ハモの椀
四谷の萬屋おかげさん。この店はまだそれほど知名度のない頃に行ったのだが、非常に気に入って、「東京で1、2を争う居酒屋に間違いない」ということで、2人で意気投合した。ただ、その後この店が星を取った時は正直驚いた。一つ星にふさわしいのは間違いないけれども、まさかほんとに載せるとは。
四谷の穴子料理「ます味」。ここもずっと宿題店だったが、行けないでいるうちに星を取ってしまった。珍しい穴子料理専門店ということで、とても存在意義のある店だ。
鱧とブリのお造り
エビイモの唐揚げ
サワラの焼物
炊き合わせ
「ふしきの」は、料理の美味しさでいっても、食文化的な価値でいっても、一つ星にふさわしい店だと思う。2011年9月にオープンしたというから、まだ一年しか経っていない。だからこの店が星を取るのは数年先だと思っていた。老舗フランス料理店などには厳しいのに、こういう店はすぐピックアップするからミシュランは面白い。
さて、ふしきの。一番の特徴は素晴らしい燗番さんがいるというところでしょうか。料理も器も素晴らしくて、器はお店で購入もできる。燗番はいわゆる居酒屋の燗番以上の存在。料理に合わせた酒と温度、それを出すタイミング、会話のタイミングなど全てを取り仕切っていて、その場の時間も空気もこの方が作り出している。
鯖すし背と腹
酒器いろいろ
オレンジピールのチョコレート
抹茶
料理は8,400円のコースのみで、酒を含めると15,000円くらい。席についてすぐ酒量を聞かれる。料理に合わせてお酒が出くる。ゆったりとして、でもキビキビとしたサービス。器の美しさ、料理の美味しさ、絶妙な燗。こういう店にはなかなか出会えない。居酒屋好きの人が集まるような店ではないが、上質な料理と日本酒を楽しむにはこれ以上の店は東京にもほとんどないんじゃないかと思う。
会津娘
初亀
隆
この日飲んだ酒をずらっと書くと、純米大吟醸無濾過原酒「天明」、純米「早瀬浦」、純米吟醸麗「旭菊」、「初亀」秋上がり、山廃純米酒無濾過自家田美山錦 「酉与右衛門」、純米「天穏」、無濾過生純米吟醸「悦凱陣」、純米「会津娘」、純米雄町「隆」、特別純米「喜久酔」、生もとの「どぶ」14号。これだけ個性ある酒が料理に合わせて出てくる。日本酒好きにとっては、なんとも至福の時間。最初に出てくる紅茶から、最後の抹茶に至るまで寸分の隙もない。これを心地よく感じるか、それとも「ほっといて欲しい」と思うかは人それぞれ。居酒屋好きは意外と後者が多いような気もする。
■店名:ふしきの
■住所:東京都新宿区神楽坂4-3TKビル2F
■電話:03-3269-4556
■営業時間:18:00~23:00(最終入店21:00)
※毎月6日~末日(1日~5日はバー営業)
■定休日:日曜日、祝日
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