小十はミシュランで2年連続3ツ星という高い評価を受けている日本料理店。1ツ星の分とく山で大満足したほどなので、和食の3ツ星とはどういうものなのか、期待して行ってきました。席に着くと「はじめてですよね?」と名刺を渡されます。カウンターには僕らを含めて6人。一番端は会社の社長が社員の女の子を連れてきた風。隣は料理にうるさそうなお姉さま2人。どちらも初めてではないようで、少なくとも名刺は渡していませんでした。ご主人はお客さんの顔をちゃんと覚えているようです。
まずは4品お盆に載せられて出てきました。キスのかき揚げはカリカリに揚がっていて香ばしい。ワタリガニの焼物は、三杯酢をゼラチンで固めたものが添えられています。カキの白和えは、カキの甘さが引き立つ。春菊のお浸しには大粒のイクラが入っていて、これが濃い目の味付けでウマい。
ホタテの吸い物は、ホタテを玉子でふわっと固めています。ダシは控えめな優しい味わい。
刺身は目の前で全て切ります。イカに細かい切れ込みを入れながら、お客さんをぐるっと見回す。手元を見ずにあれだけのことを出来るのはすごい。花板とはこんなものでしょうか。お造りは、淡路島の鯛、大間のマグロ、鳴門のイカという完璧なラインナップ。美しい見た目からして違います。マグロは塩で食べるように言われました。刺身は期待通りのおいしさ。
サワラの味噌和え。味噌に柚子を入れて焼いているそうで、香ばしくていい香りがします。白魚のかき揚げはパリパリの食感。焼き物は若手に任せているようでした。
カブとアナゴとえび芋。これも優しい味付け。小十は見た目の派手さとは違って、料理の味付けはかなり控えめな印象でした。このへんはたん熊北店のようなはっきりとした味付けとは違います。
お食事は、鯛の炊き込みご飯、赤だし、昆布とちりめんじゃこなど。これで2人分ですから、ボリュームあります。釜ごと持ってきて、「写真撮ります?」と言ってフタを取ってくれました。
デザートは、巨峰とラフランスのゼリー寄せ。最後に冷たくサッパリします。
この店がすごいのは値段が安いこと。安い方のコースで、お酒はビール1杯だけですが、一人16,000円くらい。刺身はこれだけでちょっといい居酒屋でも4~5千円はする内容だし、炊き込みご飯は2人前で鯛が丸ごと一尾。これはコスパが高い。
僕は最近、居酒屋風の店ならしっかり飲んでも一人8,000円くらい、高級店なら15,000円くらいを目安にこれ以上の店には特別な理由がない限り行くのはよそうかと思っています。やはり小十がこの値段なら小十に行きます。
小十は、完璧を目指して、それを実践している店だと感じました。ちょっと気負いすぎていて、それが客に伝わってしまう部分もあります。包丁を使えばすぐに拭くし、まな板もこまめに拭く。お客さんのこともよく見て気を利かせてくれます。
ちょっとがっかりしたのは、ご主人は潔癖に振舞っていますが、若い人はそうではないということ。鼻をかいたり、服の端で拭いたりします。
でも料理はすごかった。味はものすごくいい。味付けがやさしいので一口食べて驚くようなものではないけれど、何を食べても間違いなくうまい。仕込みに手間がかかっているし、食材にもお金をかけている。それでいてこの値段。これが適正価格だとすると他の店はどうなってるんだと思わずにおれません。
はじめての小十の満足度は高かった。でもこれが和食の最高峰かというと、どうかなという感じ。でもこの値段でこのクオリティはあり得ないレベル。今年もまた、違う季節に食べに行ってみようと思います。
■店名:銀座 小十
■住所:東京都中央区銀座8-5-25 第2三有ビル1F
■電話:03-6215-9544
■営業時間:17:30~翌2:00、土曜日17:30~22:00
■定休日:日曜・祝日
2008.12.03