すきやばし次郎で12年修業した高橋青空氏の店、青空(はるたか)。青空って珍しい店名だと思ったら、ご主人の本名だったんですね。すきやばし次郎で長年修行されたとはいえ、30代半ばの若さで銀座に店を持つというのは、そうとうな気概だと思います。すきやばし次郎の前は札幌の名店「すし善」にもいたそうです。2006年に独立し、ミシュランガイド2008で一つ星を獲得。ミシュランガイド2011では二つ星に昇格しています。これから更に上を目指そうという、今一番脂ののった寿司職人と言っていいと思います。
先付けは、菜の花とほうれん草。強い山葵の香りがします。カウンターを見渡すと、つまみから始めている人の方が多い。どうやらつまみと握りでは違うネタを出しているようです。平気で同じものを出す寿司屋もありますが、青空は違います。例えば、この日は握りにタコはありませんでしたが、刺身で出していました。見ていて羨ましくなるほど、おいしそうなものが次々と出てきます。つまみから始めて、ゆっくりと酒を飲むのが青空の正しい楽しみ方なのかもしれません。
僕は握りのおまかせをお願いしました。ひらめ、スミイカ、白甘鯛など味の淡白なものから始まり、すきやばし次郎で度肝を抜かれたマグロの三連続。赤身、中トロ、大トロと続きます。
中盤は手当てがしてあるネタが並びます。こはだ、ハマグリ、ブリ、海老、サバ、イクラ。出されたらすぐに食べるので、進みが早い。写真撮影は「どうぞ!」と、あっさり許可をもらいましたが、さすがに全て撮る気にはなれません。今後も1/3くらい撮らせてもらうことにしようと思います。
海老は、すきやばし次郎のように大ぶりのものを握った後、包丁で2つに切ります。ただし、次郎とはかなり違いますね。そもそも海老が違う。そういえば、マグロも違うし、穴子も違う。青空さんは自ら築地で仕入れるそうですが、すきやばし次郎と同じものを仕入れるつもりはないようです。
海老については、次郎とは決定的に違う点が、中に何か入れているところです。通常は山葵を入れるタイミングで、山葵の隣にあるそぼろを入れています。そしてもう一つの入れ物には何が入っていたのでしょうか。はっきりとしたことは分かりませんが、2種類を入れて握っています。握り方は二郎さんよりもしっかりとしていて、切る時に調整を必要としません。
春子鯛(かすごだい)、うに、穴子、サヨリの昆布〆。春子鯛は酢でシメています。春子は鯛の稚魚で、江戸前寿司では酢〆にされるネタです。春子というくらいだから、春先に出回るものですが、時期は12月。秋に出回るものは小鯛といって、確か真鯛とは別のもの。その時に気付けば詳しく聞けたかもしれませんが、どのみちカウンター満席でそれどころじゃなかったと思います。
最後に玉子焼きで一通り終了です。全部で16個。これでお腹もいい感じでしたが、どうしても巻物を確認しておきたかったので、すきやばし次郎でも追加で注文した、かんぴょう巻をお願いしました。これが驚きの早さで巻き上げられ、しかも素晴らしい仕上がり。やはり相当な腕があるなと、この時はっきりと認識しました。
シャリはやや硬めで、すきやばし次郎よりも更に酢が強いでしょうか。少し胃にもたれたように感じたのは、このシャリのせいかもしれません。握りはキッチリと硬めに握りますが、寿司の形、美しさは二郎さんや兄弟子の鮨水谷にはまだ及ばないように思いました。
シャリは次郎や水谷よりも小さめのわらびつに入れられ、頻繁に交換しています。僕の目の前で2回取り替えられたので、たぶん夜だけで5~6回か、ひょっとするとそれ以上替えているかもしれません。
玉子焼きは、与志乃、すきやばし次郎と進化しつつ受け継がれてきた、ふんわりとしたカステラのような玉子。次郎、水谷と比べると山芋が多めで、これだけはやや落ちる印象。やはりすきやばし次郎の玉子は違います。
檜のカウンターは高さがやや低め。そのせいでゆったりと食事ができるのだと思います。徳利や器はセンスのいいものが使われています。青空さんに「決まった作家さんがいるのですか?」と聞くと、決まった人はいないとの答えでした。伯父様が陶芸家とのことなので、いくつか作品が使われているのかもしれません。この日はおまかせの握りのみで、二人でお酒を3合ほど飲んで、一人22,000円。最高レベルの寿司であることを考えると、コスパはかなりいいと思います。ネタのよさと、握りの技術の高さ、清潔な店内と気持ちのいい接客、更に深夜まで営業している点を考えると、銀座で最もオススメできる寿司屋の一つだと思います。
■店名:青空
■住所:東京都中央区銀座8-5-8 かわばたビル 3F
■電話:03-3573-1144
■営業時間:17:00~24:00(L.O)、土曜17:00~22:30(L.O)
■定休日:日曜・祝日
大きな地図で見る