佐藤は小倉を代表する和食店と言われている。京都などで修行したご主人が小倉駅のすぐそばに店を開いた。以前もご一緒したYさんとTさんの三人で食事をすることになったので、迷わず佐藤を予約した。福岡で今一番行きたい店のひとつだったからだ。
この日は朝から平尾台の鍾乳洞に行った。数百メートル行くと鍾乳洞は水浸しになる。水は足が痺れるほど冷たかった。昔は水に潜って進むほど深くまで行ったのだが、あれは夏だったからか子供だったからか、とにかく今の僕には絶対に無理だった。その後時間があったので小倉城を見学して(下から眺めただけ)、松本清張記念館に行った。佐藤はそこから歩いて10分ほどの場所にある。
最近移転したと聞いていたが、ネットには新旧の住所が出ている。どちらが正しいかよくわからないが、とりあえずお店のHPに出ている住所に向かった。でもそこにはもう店はなかった。お店に電話して場所を教えてもらい軌道修正。旧住所からは歩いて5分ほどで移転先に着いた。HPはまだ古い住所のまま直していないようだ。
お昼だからか入ってすぐのカウンターは使っていなかった。日曜・祝日は予約があれば営業するというスタイルなので、そのせいかもしれない(この日は日曜日)。靴を脱いで左側にある部屋に案内された。この中もカウンターになっている。6人くらいが座れる小さなカウンターだ。手前に炭火の焼き台があった。ここで焼き物をやるのだろうか。
席についてまずは烏龍茶をもらった。Yさんが車なので飲めないから一応遠慮してみた。でもそれは最初の一杯だけで、「気にしないで飲んでください」というYさんのお言葉に甘えて日本酒をしっかり飲ませていただくことにした。
目の前には食材が入ったザルが置いてあった。山菜がかなり豊富だ。春の山菜、ゴマの風味は見た目もきれいで春らしい瑞々しさがある。今年初めての山菜だ。軽くて食べやすい反面、力強さを感じる。外はまだ肌寒いがもう春なんだなとこの山菜を食べて感じた。
サユリの笹寿司となまこ。サユリは笹の葉にくるまれている。開けると山椒の香りがした。五島牛のヒレは中にウニを巻いている。少し脂こいがウニと牛肉の相性はいい。
たけのこ、焼き豆腐、たらのめ、こごみ。そしてカラスミとイカの花団子。炭火の焼き台で焼かれて運ばれてくる。
ふぐのしゃぶしゃぶは、焼き台から炭を取って、一人づつ小さな鍋で出される。白菜とネギとふぐのダシだそうだ。大振りのふぐが厚切りにされていて、結構なボリュームがある。筍とワカメもよく合う。焼き白子は熱々のトロトロ。火傷しそうなほどに熱くてうまい。熱すぎて苦情?を言う人がいるらしいが、こんなにうまくて文句を言うなんてどうかしている。
酒は竹筒で出される。結構な量入っているようでなかなか空にならない。聞いてみると、二合入りだそうだ。もっと量があるように思えるが気のせいだろうか。
シメのご飯は山陰の松葉ガ二を使ったカニご飯。一人三杯ずつくらいおかわりしたが食べきれず、残りはお土産にしてくれた。最後にくずきり、みかんとリンゴのジュース、抹茶などが出された。
料理はきちんとしているが、雰囲気はかなり気軽な感じだ。福岡にミシュランが来れば、この店も一つか二つ星をとるだろう。そうなっても今の気軽な雰囲気のままでいて欲しいと思う。帰り際ご主人に「これは何料理になるんですか。京料理ですか」と聞くと、「いや、ただの田舎料理ですよ」と謙遜されていた。ただその時のご主人の笑顔には、言葉以上の自負があるように思えた。
■店名:佐藤
■住所:福岡県北九州市小倉北区京町3-5
■電話:093-541-3767
■営業時間:17:00~24:00
■定休日:日曜・祝祭日(予約あれば営業)