廣川に行くことに決めたのは、旅行に行く直前だった。嵐山で天龍寺などを観光するので、近くにある廣川に寄らない手はない。予約の電話をすると、予想通り満席とのこと。ただし予約席は2階だけで、1階は予約がいらない席だそうだ。「11:30開店ですが15~20分前には開けますので、その時間であれば並ばずに入れます」と親切に教えてくれた。
予定通り11時前に来たのだが、少し時間があるので先に天龍寺に行くことにした。そこで見つけたのが精進料理「篩月(しげつ)」だった。先に精進料理に行ってその後でうなぎを食べる。精進料理はさっぱりとしているから、ハジゴでもなんとかいけるだろう。
廣川に戻って来ると、思った通り行列していた。店内に10人、外に20人が並んでいる。僕らが最後の客だ。後から来た人たちはみんな断られている。「遠くから来たんですが・・・」と言ってすがる人もいたが、丁重にキッパリと断っていた。ちょうど2時間待ったところで席に案内された。
席に着くと、当然のことながらすぐにラストオーダーだった。2時間も待ったのに座った瞬間に急かされる。やはり時間に余裕をもって来ないといけない。うな重定食(3,900円)だけお願いすることにした。
廣川はミシュランで一ツ星を獲得している。うなぎはものすごくおいしくて、「これは星を取るよなあ」と納得できる味。これまで食べたうなぎの中でも一番美味しい部類に入るだろう。うなぎは香ばしく焼かれてあり、しかもふわふわの食感。とても上品な味わいだ。
うな重定食につく洗いとうざくは単品の半分の量だが、このくらいで十分だ。鯉の洗いは酢味噌で食す。どれもおいしくて隙がない。お昼2店目でうなぎは少しキツイかと思ったが、普通に味わって食べることができた。2時間待ったからお腹がこなれていたし、定食が洗練されていたからというのもあると思う。
お客さんの大半はアジア系の外国人だった。外国人には英語のできるスタッフの方が丁寧に対応していた。常連さんは本当に大切にされていて、会計の時に長々とお話をして、玄関の外にまで見送るほど。その他の日本人、つまり僕らは全く相手にされない。京都に来るとこういうことはよくある。僕だって次いつ来るかも分からないし、そんな客相手にしててもしょうがないとは思うけれども、それでも寂しい気持ちにはなる。でもまあ、うなぎがおいしかったのでよしとしよう。名の通ったうなぎの老舗はたくさんあるけど、今こういうレベルで出している店はそんなにないんじゃないかと思う。
■店名:うなぎ廣川
■住所:京都府京都市右京区嵯峨天龍寺北造路町44-1
■電話:075-871-5226