久々の福わうち。前回の訪問は1年近く前になります。新しい店にも行きたいし、馴染みの店にも顔を出したい。あちこちといろんな店を回っているうちに、すっかりご無沙汰していました。先日、福わうち店主、三宮さんから電話が掛かってきました。「もしもし、くにさーん?どうも、ご無沙汰してまーす」。相変わらず元気がいい。これまでも何度か電話でお話をしていますが、いきなり掛かってくるとやっぱりビックリします。しばらくお店に伺ってないので、この機会に行くことにしました。とはいえ、なかなかタイミングが合わず、予約が直前になってしまいました。「空きが2席だけあるんですが・・、なるべくゆっくり来てください」とのこと。最近は飲食店も大変な状況ですが、土曜日の夜に満席とはすごいことです。特に福わうちの場合は、馴染みの客を多く抱えていて、中には芸能人などお忍びで来る人も少なくない。日ごろお客さんを大切にしているからこそ、こういう厳しい時期にも支えてもらえているということなのでしょうか。
いつも通り全て三宮さんにおまかせします。飲み物は生ビール。まずはビールのアテになる品が出てきました。自家製の豆腐の味噌粕漬け、ご飯、蟹、ウニ、きゅうり、奈良漬をあえたもの、ホタルイカの酢味噌あえ。ホタテの肝。肝はオスのホタテ。オレンジ色で新鮮なほどうまいと言います。これは食べ過ぎてはいけないので、注意が必要。個性溢れる怒涛のツマミが一段落して、ここで落ち着かせるように、菜の花とハマグリの温かいお浸しが登場します。かつおと昆布の出汁が素晴らしい滋味。そして、添えられた菜の花がなんとも旨い。福わうちはやはり本物です。以前はもっと居酒屋然としていましたが、これから本格的な日本料理にシフトするのでしょうか。以前はトロかつや肉じゃがカレーなどB級に近い料理が目立っていました。それらは今でも福わうちの名物ですが、この日の「おまかせ」には登場しません。福わうちのスタイルは大阪割烹をイメージしているそうです。「お腹いっぱい食べて欲しい」という思いから、肉じゃがやカレーなど馴染みやすい料理を、惜しみなく提供するスタイルに徐々に変化してきたのではないでしょうか。今後、福わうちは方向性を変えていくようです。今回のように、数種類の出汁を使って食材を活かすスタイルも、ある意味福わうちらしいと思います。
刺身はいつもの細長い皿に盛られています。70cmくらいありそうな長い皿です。福わうちは魚に関しては定評のある店です。僕が特に好きなのは、皮目を炙ったのどぐろ。なんともいい香りと甘味がたまりません。ここらで、酒は日本酒にシフト。新潟の鶴齢(燗一合半1,200円)、緑川 まさむね(燗一合半1,200円)などを頼みます。生ホタテのバター焼きと、鰯の梅オイル煮。見た目はオイルサーディンのようですが、オイルサーディンは蒸す、梅オイル煮は煮るので根本的に違います。添えられた水菜のお浸しはカツオ出汁が香ります。ツマの力強さと全体のバランスが、メインの食材をより引き立てている。福わうちの実力が存分に発揮された料理の数々。今日は気が抜けません。
竹の子と角煮。これはちょっとB級なテイストで福わうちらしさを留めた一品。メヒカリの唐揚、あげ巻貝、新玉ねぎ。新玉ねぎは甘酢と赤ワインで煮ています。これが酒によく合う。終盤に差し掛かったところで、アクセントになる酸味のある料理。おまかせではありますが、コース全体のバランスもよく考えられています。
北海茶碗蒸しは、アワビとホタテと蟹などがゴロゴロと入っています。肉じゃがは、大ぶりな豚・にんじん・ジャガイモが1個ずつ盛られて豪快なビジュアル。これぞ福わうちという一皿です。たけのこ、太刀魚の塩焼と続き、この日は一体何品出てくるのか不安になりそうなほどまだまだ出てくる気配です。このへんで三宮さんが来てくれて、少しお話をしました。ちょうどお店も落ち着いてきて、我々の料理も一段落といったタイミング。「お腹はまだ大丈夫ですか?」と気にしてくれるのですが、さすがにもう食べれない。最後におにぎりと卵掛けご飯をもらうことにしました。
おにぎりはシラスと鮭のおにぎり。卵掛けご飯は余計なものが入っていない、卵と白米だけのシンプルなもの。でもこれが一番おいしい。卵掛けご飯が流行っていた頃、これだけではカッコつかないので、いろんな薬味を用意するのが普通でした。でもそれが卵掛けご飯の旨さを邪魔していると、僕はずっと不満に思っていました。シンプルな卵掛けご飯は、卵・白米・醤油の品質、醤油の加減とかき混ぜる技術が味を左右します。これがツウの食べ方ではないでしょうか。
福わうちはアラカルトで食べる以外にも、確か12品で、6千円、8千円、1万2千円くらいのおまかせコースが3種類ありました。でもこれはおまかせ料理が中心のコースであって、本当のおまかせとは言えません。昨年、京都の料亭の人に「おまかせというのは、金額がおまかせということや」と言われたことがありました。なるほど、確かにそうかもしれません。「今日は持ち合わせがないからこのくらいで」と言えば、そのようにしてくれる。馴染みの店なので、ビックリするほどの値段を取られる心配はありません。僕は福わうちに来ると、食べたいものはいくつか注文しますが、それ以外は全ておまかせ。今日ある食材で作って出してくれればいい。どこの店でも常連さんたちはそうしているものです。今日は全ての料理の写真を載せてみました。これだけ食べて、あとビールと日本酒を2~3杯ずつ飲んで、一人一万円。こちらが心配になるほどのコスパの高さです。久々に旨いものを腹いっぱい食べました。この食後の感覚は福わうちでしか味わえないものです。
【以前の記事】
・福わうち@白金高輪 7 新メニューの名称募集!
・福わうち@白金高輪 6 あんこう鍋
・くにろくオフ@福わうち 5 貸切でこのヤロー! その3
・くにろくオフ@福わうち 5 貸切でこのヤロー! その2
・くにろくオフ@福わうち 5 貸切でこのヤロー! その1
・福わうち@白金 4 珍しいメニューなどなど
・福わうち@白金 3 鶏鍋
・福わうち@白金 2 おすすめメニューのご紹介
・福わうち@白金
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